ドラフト1位で中日に入団も伸び悩み
堂上選手を変えた川相監督の采配

 堂上直倫選手は、06年の高校生ドラフトで注目を集め、くじ引きの末に1巡目で中日に指名され入団した。しかし、09年まで一軍出場はわずか5試合に過ぎなかった。典型的な伸び悩みである。

 そんな折、10年から川相昌弘氏が二軍監督に就任した。球団は将来のスター候補生として堂上をスタメンで起用するように川相監督に求めたが、彼はその求めに従わなかった。

 なぜならば、堂上選手を見ていて、「この程度のやる気の選手を使い続けていいのか」と思ったからだった。そこでスタメンには使わず、途中出場をさせるようした。守備から入って、最低1打席が回ってくるように計らった。

「自分の力で奪い取るという気持ちがない限り、レギュラーの座はつかめない」というメッセ―ジだった。

 一軍で活躍するためには、今、何をすべきなのか。与えられたことだけをこなしていては、その域には達しない。だから、「何より大事なのは、本人のやる気です。こちらは、本人をやる気にさせるようにうまく誘導していかなければいけない」

 転機は、監督直々のノックだった。堂上選手は後に、「自分に本気でノックをしてくれたのはあの時の川相監督が初めてだった」と川相自身に送った手紙に書いている。

 それで堂上選手は変わった。必死に練習に取り組むようになり、その年の6月に一軍に昇格。自身最多の82試合に出場した。

 天国の疑似体験という方法もある。一軍に定着させないが、たまに昇格させて野手であれば一度か二度、代打などで打席に立たせる。あるいは先発で使う。それで定着する選手は少ない。さまざまな事情から、すぐに二軍に戻される。

「なんで、もう二軍へ?」「一打席だけじゃん」「ヒット打ったし!」と思うこともあると思う。それが「天国の疑似体験」だ。

 簡単に言えば、スポットライトを浴びる経験をさせる。歓声を浴びさせる。あるいは、一軍でもやれるという自信を持たせる。凡打であっても、手応えがあればいい。一軍のピッチャーのスピードに負けなかった。ピッチャーであれば、二人だけど、凡打に抑えた。それが自信にもなり、また、「やっぱり一軍はいいな」「ここで自分も活躍したい」と思うようになる。

 そうすれば、ひと皮むける。練習にもハリが出る。目標ができた人間は強い。