部下を信頼して仕事を任せることは、上司の重要な役割の1つです。ですから、仕事をいかに巧みに部下に任せるかというノウハウを学ぶビジネス書が、これまでにたくさん出版されています。それだけ部下に仕事を任せることに関して悩み、勉強中の上司が世の中にはたくさんいるのでしょう。
以前、この連載でムリヤリ仕事を押し付ける困った先輩について書かせていただいたことがありました(連載101回参照)。そこで今回は、そうした先輩社員とは対極な行動を取る、任せたはずの仕事に介入=口出しをしてくる困った上司とその部下の話をご紹介しながら、そんな上司の部下になってしまったらどうすべきか、対処法を考えて行きましょう。
「指示が細かくてイラっとする」
任せてくれない上司に苛立つ部下
「本当に……イライラする感情を抑えるのに毎日苦労しています」
こう嘆くのは某ホテルの法人営業部門に異動したばかりのEさん(32歳)。どうやら、新しい職場の上司のマネジメントに対して、ストレスを感じているようです。溜まりに溜まったストレスをどこで発散すればいいのかわからず、結局、帰宅途中で1杯飲みに行く機会が増えてしまい、自分の小遣い不足に頭を痛める日々が続いている様子。新しい職場ゆえ、「聞いてくださいよ」と愚痴を言える同僚がいないのも、Eさんの辛さを増幅させているのかもしれません。
そんなEさん、法人営業部門へ異動する前は、現場(ホテル)のフロントで長い間仕事をしてきました。その当時の仕事について質問すると、
「上司が仕事を任せてくれたので、やりがいを感じていました」
と熱く語ってくれました。ホテルのフロントは、宿泊予約やレセプションと呼ばれるお客様への接遇に加えて、各種インフォメーションやキャッシャーなどマルチ(複数)な役割を担う仕事。さらにお客様は日本全国だけでなく世界中からやってきますから、様々な要望が飛び出します。ときには十分なサービスが提供できなくて、お叱りを受けたこともあったそうです。ただ、
「上司のサポートで救われたことが何回もありました」
というように、フロント時代の上司は仕事を任せてくれる一方で、困ったときには頼りになる存在だったために、ノビノビと頑張ることができました。
ところが、現在の仕事(法人営業)について尋ねると、表情が一変。
「(今の)上司は事細かなことまで指導してくるので、正直滅入っています」
伏し目がちにこう話してくれました。