われわれ石油化学産業は非常に苦しい時期にさしかかっている。原油が多少高くても、安定して需要が減らなければいいが、原油高騰かつ需要減という“ダブルパンチ”になる可能性もある。
原油価格が147.27ドルまで高騰した7月、英国や米国を訪れ、投資家たちと話をした。
そこでしばしば尋ねられたのは「これほど原油価格が高いのに、日本企業が石油化学をやる意味があるのか」ということだ。確かに来年以降、原料代が安い中東のプラントも続々立ち上がる。
短期的にはコスト上昇分を価格転嫁するしかない。中期的にもいろいろ手を打っているが、あまり効果はない。
かつてポリエチレン、ポリプロピレンなどで業界再編を行なったが、もっと合従連衡(がっしょうれんこう)が必要だ。コモディティ(汎用品)はやっていけない時代が必ずくる。
売上高の7~8割を原料費が占める。長期的には(原料の)“脱ナフサ”を進め、超長期では二酸化炭素を原料として使えるまでにならなければ、(産油国らとの)ハンディキャップレースから逃れることはできない。
一方で製品の“脱ケミカルズ”も進める。トン、キログラム単位の単純な製品から、せめてグラムベースの議論ができる製品を増やすことが必要だ。
その際、かつて競争力を低下させていると揶揄された“総合”が強みになるはずだ。製品は高度化、複雑化、ソフト化している。新しいものを生み出す点で、単品商売より、技術が複合化した企業のほうが優位に立てる。
(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)