マイスナー氏はイスラム教徒が増える現状をきちんと直視し、その上で同じドイツ人としてイスラム教徒と共存する姿勢を持つことが重要だと語る。

「ドイツでは10人に1人がイスラム教徒といわれ、彼らの多くはドイツ国籍を持ったドイツ人なのです。これが現在のドイツの姿なのです。ほとんどのイスラム教徒がドイツ社会に溶け込んで平和的に生活していることは知られていますし、反イスラムデモよりも反極右デモの方が参加者は多かったのです」

ローンウルフ、それとも組織的犯行?
背景がよく分からない仏連続テロ事件

 3人の容疑者が警察によって射殺され、4人目の容疑者はトルコ経由でシリアに逃亡した可能性が高く、現時点で事件の全貌を解明する手がかりは少ない。

 テロリズムの歴史に詳しい明治大学政治経済学部のリュボミール・トパロフ特任准教授は、シャルリ・エブド編集部襲撃事件の実行犯がそれほど高度な訓練を受けていなかった可能性を指摘する。実行犯の一人は過去に中東のイエメンで軍事訓練を受け、アラビア半島のアルカイダとの繋がりも指摘されているが、組織がクアシ兄弟による襲撃を計画・支援したという情報も出てこない。トパロフ氏が語る。

「パリでの銃撃事件はある意味で新しい形のテロリズムが誕生したことを意味する。テロ組織で訓練を受けた個人が、自らの意志でテロを決行するという形は、これまであまり存在しなかった。短時間で多数のジャーナリストや警察官を殺害し、現場から逃走する部分だけを考えると、よく訓練された者の犯行に見えなくもない。しかし、シャルリ・エブド編集部襲撃前に間違った建物に入ったり、逃走車両に身分証を置き忘れるなど、理解に苦しむ点もいくつか存在する。少なくとも襲撃直後には逃亡を図っているので、その時点で自殺願望があったとは考えにくいし、逃亡することを前提に犯行に及ぶ際に身分証を携帯するのだろうか」

 先に述べたように、シャルリ・エブド編集部襲撃事件の容疑者は2005年にシリアに向かおうとしたところを拘束され、その後服役している。服役後も警察の監視対象にあったと複数のメディアが伝えているが、警察はテロを未然に防ぐことはできなかったのだろうか?再びトパロフ氏が語る。

「まだ明らかにされていない情報が存在するはずなので、結論を出すには早すぎるのだが、フランスの警察や諜報機関が事件を未然に防げなかった責任を問われても私は驚かない。フランスの警察や公安は古くから国内のイスラムコミュニティで情報収集を行っており、とりわけ歴史的に遺恨を残すアルジェリア系住民に関する情報は当局によって常にチェックされているはずなのだが。個人によるテロを防ぐのは決して簡単ではないが、警察による監視がきちんと行われていたのかは疑問だ」