“腹をスマートに”の意を込めた日立製作所の「はらすま」ダイエットプログラムが、2007年11月からIT化の実験に入る。メタボリックシンドローム対策市場は各社が参入し、早くも混戦模様だ。
「はらすま」とはどういうものなのか。同プロジェクトの中心人物である中川徹・日立健康管理センタ医師によれば、きっかけは、NHKのディレクター・北折一氏が体験で生み出した「計るだけダイエット」(今夏『死なないぞダイエット』として出版)を知ったことだという。この方法論に共鳴した中川医師が、産業医科大学公衆衛生学研究所、損保ジャパン総合研究所と共同開発したのが、この減量プログラムだ。昨年、メタボと診断された30代、40代社員のうち51人を対象に検証実験した結果、90日間で63%がメタボを完全に解消、「あと一歩」の人を含めれば、80%に効果があった。リバウンドという失敗は皆無だった。
同プログラムは、自分の20歳時の体重を理想に、現在の体重の5%を90日間で減量するもの。運動・食品別「100kcalカード」のなかから自分で実行できそうな減量プランを選ぶ。毎日2回、100グラム表示のデジタル体重計で体重を測定して記録。そして10日ごとに保健指導員のチェックを受ける。これを90日間続ける。「3ヵ月続いたものは“習慣化”する」という理由からだ。
しかも、この目標設定、計画、実行、データ検証、方法論の構築といった手順は、会社員が日常行なっているビジネス戦略や手法そのものだ。今後の課題は、自主管理しやすいIT化にある。多くの企業、健康保険組合などに向けて商品化も狙えるためだ。
一方、2008年度から40歳以上の社員や扶養者へのメタボ健診と指導が企業などの医療保険者に義務づけられる。しかも、2008~2012年度の5年間の“実績”で、医療費の負担が増減する。企業には、一人でも多くメタボ人間を減らさなければならない事情があるのである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 町田久美子)
※週刊ダイヤモンド2007年10月20日号掲載分