イスラム過激派による新聞社襲撃は、世界屈指の文化都市パリも、殺戮(さつりく)と破壊に明け暮れる中東やアフリカと隣り合わせ、という現実を見せつけた。「表現の自由」は欧州の常識であっても、イスラムは「預言者を侮辱する自由」は許さない。イスラム国は、先進国が謳歌する近代社会の日陰に生まれた。世界秩序に牙をむく憎悪を力で抑え込むのは容易ではない。命を張った反乱は世界を一段と不安定へと向かわせるだろう。

 今年は世界で何が起こるのか。米国、中国が抱える構造危機は、遠雷のような不気味さを秘めるが、目を離せないのが欧州だ。内なるギリシャと外からのロシア。世界を揺るがす懸案に事欠かず、ユーロ体制が動揺する年になりそうだ。

国家による危ういチキンゲーム

 不安の幕開けは1月25日のギリシャ総選挙だ。EUから求められた緊縮財政の是非が争点となっている。「EUの言いなりになるな」「債務の減額を」と主張する急進左翼連合「スィリザ」が第一党になる勢い、という。そうなったら「ちゃぶ台返し」である。EUにとって「身を切る改革」がギリシャ救済の条件だった。

 独シュピーゲル誌は3日、「総選挙後にスィリザのツィプラス党首が政権を握り、緊縮財政を放棄し債務返済を拒否すれば、ギリシャのユーロ圏離脱は避けられないと独政府は判断している。メルケル首相、ショイブレ財務相はギリシャがユーロ圏を離脱する影響は限定的と認識するようになった」と伝えた。

 タブロイド紙のビルトは7日、「ギリシャがユーロ圏を離脱した場合、預金者が殺到し銀行が破綻に追い込まれる可能性を警戒している。そうなったらEUの銀行同盟が巨額の金融支援をせざるを得ない」という政府関係者の見方を紹介した。ギリシャ国民にすれば、銀行から預金を引き出し、強い通貨ユーロを手元に置いておきたい。

 ドイツ政府は公式的には「ギリシャがユーロに留まることを望む。離脱を前提とした検討はしていない」(政府報道官)というが、メルケル首相は、かねてから「ギリシャの加盟を認めたのは社会民主党政権の失敗」と批判的で、側近の政治家は「ギリシャが離脱しても影響は軽微だ」などと主張している。