ロシアの「クリミア併合」から激化した米ロ対立。両国が争うのを静観し、喜んでいるのが、米国没落後の覇権国家を狙う中国だ。そして、米ロ対立は情けない結果も生んでいる。覇権国家の長・オバマと、剛腕マッチョのプーチンが、習近平に「擦り寄っていく」という状況になっているのだ。今回は、米中ロ三国関係の現状と、今後の見通しを考える。

実際の戦闘こそしていないが
米ロは「戦争中」という現実

 選挙を控えて忙しい日本人は気づいていないが、世界では「戦争」が行われている。

 欧米対「イスラム国」も戦争には違いない。しかし、世界での主な戦いは、米国対ロシアだ。これは、記事を面白くするための誇張ではない。実際、ロシアのメディアでは、「情報戦争」「経済戦争」など、「戦争」という言葉が毎日飛び交っている。どういうことだろう?

1.情報戦
 米国は、世界中で「プーチンは悪魔である!」「現代のヒトラーである!」というプロパガンダを展開している。情報戦に弱いロシアは、仕方なく、国内を固めている。ロシアのニュースを見ると、そのほとんどが「米国批判」「親米ウクライナ政権批判」「ウクライナ軍の残虐行為」などで占められている。

 それを見てロシア人は、「米国はなんという極悪国家なのだろう」「ウクライナ新政府は、なんと愚かなのだろう」「ウクライナ軍は、なんと残酷なのだろう」などと憤っている。そして、「プーチンがんばれ!」という結論になるのだ。プーチンの支持率は現在、なんと86%だ(!)。

2.経済戦
 ご存じのように、欧米は、ロシアに経済制裁を課している(そして、日本もそれにつきあわされている)。経済制裁の結果、そして原油価格暴落の影響もあり、ロシアルーブルは、史上最安値を更新しつづけている。

 2013年初の1ドル=30ルーブルから50%下落して、現在は45ルーブルになった。ロシア国民にとって、最大の不満は、ルーブル下落で起こる「インフレ」である。そして、ロシアも、ささやかながら「報復制裁」を実施している。「欧米からの食品輸入制限」がそれだ。この措置は、ロシアへの輸出で潤ってきた、スペイン、ギリシャ、オランダ、バルト三国、フィンランドなどの農業に大きな打撃を与えている。