企業のスポーツからの撤退は、前回紹介した「スポーツ部の休・廃部」に止まらず、「スポンサーシップの打ち切り」へと拡大している。
すでに4社が
スポンサー契約打ち切りを発表
1月14日付の毎日新聞は、新日本石油・ENEOSと商用印刷の会社ウイルコがJOC(日本オリンピック委員会)のマーケティングの柱であるスポンサーシップ(オフィシャルパートナーと称する)の契約更新をしない、と報じた。昨年暮れに契約打ち切りを明らかにしたAIU保険と野村證券ホールディングスを合わせると、これで4社になった。
何百社も契約しているのであれば重大な問題ともいえまいが、28社(05年から08年までの契約)のうちの4社だから影響は大きく、深刻な事態であることは間違いない。
いうまでもなく、スポンサーシップ契約からの収入は、JOCの主財源である。このスポンサーシップの特徴は、1社3億円の見返りとしてJOCが選手の肖像権使用(選手の了承を得たうえで)を認めることにあり、選手の商品化といえる。JOCは、実績に加えて商品価値のより高い選手を肖像権使用の対象となる「シンボルアスリート」と格付けして、セールスを行なってきた。
このスポンサーシップによる収入は、選手強化費として50を超える競技団体に配分される。しかし、収入全額が配分できるわけではない。JOC関係者の説明によると、肖像権を使用した選手への使用料支払い(1000から2000万円)や諸経費を引くと、各競技団体へ分配できるのは45%ぐらいになってしまう。しかも契約期間は4年であり、1年に換算すると10億円足らず。それでも貴重な収入であり、それが少しでも減るのは、競技団体への強化費援助の責任を負うJOCとしては重大な問題なのだ。
制度内容の変更は
「吉」とでるか?
JOCは、09年から012年までの契約について、スポンサーシップを2つに分ける新たな方式をつくり、セールスを始めた。具体的には、
■選手の肖像権使用を認める「ゴールドスポンサー」――1社6億円
■肖像権使用を含まない「オフィシャルパートナー」――1社2億2000万円
の2本立てである。また、「ゴールドスポンサー」については、資金力のある企業の属する業種(カテゴリー)に絞る。この方式変更についてJOC関係者は、こう説明する。
「従来、一律に1社3億円ということでやってきましたが、選手の肖像権を使わない企業もあるし、一方では、28社もありますから対応しきれないという面もありました。それにCM制作などで選手に負担がかかることも考慮しなければならない。そうしたことから業種を絞って選手の肖像権を使う企業をより厚く扱うということにしたわけです」
「ゴールドスポンサー」の対象となる業種としては、自動車、食品、新聞などが上げられている。この新方式によるスポンサーシップのセールス状況は、どうであろうか。前出の関係者は、こう付け加える。