相続は、“争族”と言い換えられるほど、親族間の争いの種になりやすい。絶縁状態に至るケースも珍しくない。“争族三兄弟”といわれる、争いの種について考えてみよう。

 争族は、さまざまな原因を理由として発生する。

 法律では法定相続人と相続割合が決められているが、それを誰もが納得するかどうかは全く別問題だ。遺言書を残していても問題は起きる。

 自筆の遺言書はあったものの、形式が不備で遺言書と認められなかったり、遺言書の内容に相続人たちが反発して遺言を執行できない状態になることも珍しくないのである。

「親父はいったい何を考えていたんだ」などと相続人が頭を抱え、次には、「こういうことって許されるの」と疑念と批判が湧き、「言うべき事は言い、もらえる物はもらう」と決意を固めたりすると、争族の発生だ。

 相続人の間で遺産の分割について合意ができない場合は、家庭裁判所に調停を求めることができる。これを「調停分割」という。

 それでも合意ができない場合は、家庭裁判所に分割の審判を仰ぐ「審判分割」を行うことになる。審判内容にさらに納得がいかないのであれば、高等裁判所に提訴して争う。こうなれば、もはや泥沼の10年戦争だ。

最低保障の「遺留分」は
兄弟姉妹にはない

 “争族三兄弟”といわれる争族の最初の種となるのが「遺留分」だ。再婚で、2人の子供に恵まれた後妻のケースを見てみよう。

 夫から、前妻との間に子供が1人いたことを聞かされてはいたが、離婚からすでに50年もたち、夫も前妻らとは一切の接触はなかった。後妻は、「夫の事業が成功したのは、自分の助力があったからこそ」と自負していた。

 夫は、「財産の全てを妻と2人の子に」という遺言を残して逝った。ところが2カ月後。見ず知らずの中年男が訪ねてきて、「私にも相続の権利があります」と要求してきた。「どなた様ですか」といぶかる後妻に、男は、「前妻との間の子です。私には遺留分という権利があるのです」──。

 夫の兄弟たちも黙ってはいなかった。「遺言はそうなっていても、俺たちも事業に協力していたのだから、いくばくかはもらってもよいのではないか」。

 後妻は途方に暮れた。「亡き夫と一緒に作り上げた財産なのに、なぜこんなことに…」。