何事もやり過ぎはよくない。量的質的緩和策の下で日本銀行が猛烈に国債を買い続けた結果、1月中旬に国債の利回りが、3カ月物から4年物までマイナス金利、5年物もほぼ0%になる異常事態に陥った。
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ロナルド・マッキノン スタンフォード大学教授は、中央銀行が過度に金利を低下させると民間銀行の収益が悪化してしまう問題を指摘していた。彼らの体力が弱ると、中小企業向けなどリスクを伴う融資は結果的に行えなくなってくる。金融緩和策のやり過ぎは逆効果になり得る、という警告であり、「国債の金利を直接的に押し下げようとする政策はやめるべきだ」と提言していた。
イングランド銀行とFRB(米連邦準備制度理事会)は、国債を購入して長期金利を押し下げる政策を行ってきた。しかし、当座預金に払う金利は、前者は0.5%、後者は0.25%より引き下げていない。両行とも極端な金利低下誘導は金融産業の収益を不必要に悪化させ、市場機能を弱めてしまうと懸念していたからである。
その点においては、両行はマッキノン教授の考えに共鳴していたともいえる。「やり過ぎ」を避けた2行が、先進主要国の中央銀行の中では先に出口へ向かえそうになってきたのは象徴的である。
今のような日銀の政策が続くと、国債市場は死んでしまうだろう。今の国債市場では、証券会社が財務省の発行入札で買ってきたものを、日銀の買いオペに持ち込むという流れが取引の大半となっている。日銀による全額国債直接引き受けと事実上変わらない。
こうなると、国債関連のビジネスは成り立たなくなってくるため、縮小や撤退が起き始めている。昨年暮れの米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによる格下げもあって、海外でも日本国債を敬遠するムードが強まっている。