日米のガソリン価格の動向が、両国の中央銀行の違いを際立たせている。
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今年のピーク時から10月までのガソリン価格の値動きを消費者物価指数で見てみると、日本は-3%、米国は-13.4%の下落だった。米国の方が圧倒的に安くなっている。日本銀行による事実上の円安誘導で、その開きは今後さらに大きくなりそうだ。
ダドリー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁は12月の講演で「エネルギー価格の下落はわれわれの経済にとって有益だ。これは交易条件のポジティブなショックであり、家計の実質収入を顕著に高め消費支出に拍車をかける」と語った。
原油価格が1バレル当たり20ドル下がると、産油国から消費国へ1年で6700億ドルもの所得移転になる。他のエネルギー価格もつられて下がるので、米国を含むエネルギー輸入国にとって実際の利益はより大きい。米国内のシェールオイルなどへの投資は打撃を受けるが、同産業が米国のGDPに占める割合は小さいため、悪影響を過大視すべきではないとダドリー総裁は主張した。
フィッシャーFRB(米連邦準備制度理事会)副議長も同様の考えを12月初めに示している。エネルギー価格の下落は米国のインフレ率が目標(2%)に到達する時期を遅らせるが、消費が活発化して経済成長が高まれば、賃金が徐々に上昇してインフレ率もやがて適度に高まっていくとFRB幹部は考えている。
一方、日銀幹部はガソリン価格の下落を見て「困った、困った」と言っている。「2年程度を念頭にできるだけ早期にインフレ率を2%にする」と昨年春に宣言してしまったからだ。10月31日には、円安誘導を事実上強化するために追加の金融緩和策を決定した。