相続は、“争族”と言い換えられるほど、親族間の争いの種になりやすい。“争族三兄弟”といわれる争いの種のうち、今回は「寄与分」「特別受益」について考えてみよう。
苦労した人には「寄与分」
嫉妬が絡む「特別受益」
争族三兄弟の二つ目「寄与分」が絡むのは、こんなケースだ。
長男「俺は、お父さんとお母さんの面倒を見続けてきた。その点を、相続では配慮してほしい」
次男「そうは言ってもお兄ちゃんは、実家をもらったのだから、その分と相殺すべきじゃないか」
長男「老いて認知症となった両親の介護は、実家うんぬんで済む話ではないだろう」
長男は、被相続人の介護を特別に寄与した行為と主張し、次男は、長男が実家を得たことを特別な利益を受けたと主張して、議論の決着点を見いだせていない。
まず寄与分について説明しよう。確かに、被相続人のために兄弟姉妹の中でも努力を惜しまなかった者はいる。民法でも、遺産の分割に当たり、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした相続人(寄与者)に対して、その寄与に見合った割合の財産(寄与分)の取得を認めている。
しかし、寄与とは何か、という基準は人によってさまざまだ。自分では寄与していると思っていても、誰もが同意しているわけではない。これが遺産分割協議を紛糾させる大きな要因になる。
これまでの判例では、次のようなケースが特別寄与と認められている。
(1)被相続人の事業で無報酬または、それに近い状態で労務を提供してきた。
(2)被相続人に財産的な支援を行い、債務返済などに充てて財産の維持に寄与した。
(3)被相続人の療養看護に努め、医療関係費の支出を抑えて財産維持に寄与してきた。
(4)本来複数の相続人が負担すべきであった扶養義務を一手に担い、財産維持に寄与した。