どれくらい相続税がかかるかを正確に知るには、専門家に相談する必要がある。しかし、申告の要不要と大まかな税額については、図のような4つのステップで比較的簡単に分かる。

 最初のステップは、相続する正味の遺産額を把握することだ。一般にプラスの財産として現金や預貯金、株式、国債、自宅などの土地建物のほか、書画骨董やゴルフ会員権などがある。また、マイナスの財産として、ローンや税金の未払い金などがある。これらを差し引きして、正味の遺産額を把握する。

 ポイントは、プラスの財産をどう評価するかだ。現金や預貯金は額面そのままだし、株式や国債などは相続時点の相場で評価すればいい。複雑なのが土地建物などの不動産だ。同じものは二つとなく、市場での取引価格もよく分からない。そこで、相続税の計算においては一定の評価方法が決められている。

 また、相続する資産には含まれないが、相続税がかかるものとして「みなし相続財産」および一定の「贈与財産」がある。いずれも受取人や所有者が決まっており、遺産として分割するものではない。しかし、税負担の公平という観点から相続税の計算には含めることになっている。

申告が必要か、税額はいくらか<br />4つのステップでチェック

2015年1月から基礎控除額が引き下げ

 第2のステップは、正味の遺産額が、「基礎控除額」を超えるかどうか確認することだ。評価額の合計が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告は不要となる。

 基礎控除額は2014年現在、5000万円と法定相続人1人当たり1000万円を合計したものである。例えば、配偶者と子供2人が相続人なら8000万円とかなり大きい。

 ところが、この基礎控除額が15年から引き下げられる。具体的には、定額部分が5000万円から3000万円に、法定相続人1人当たりの額が1000万円から600万円に、4割も引き下げられる。配偶者と子供2人が相続人の場合、8000万円が4800万円に減るのだ。

 なお、相続放棄する人がいたり養子がいるケースは少し注意が必要だ。例えば、民法では相続放棄した人は相続人ではないが、税法では相続放棄をした人がいても法定相続人の人数に変わりはない。逆に、民法では養子は全て相続人となるが、税法では被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合も2人までしか基礎控除額の計算に当たって法定相続人として認められない。

 養子といっても、特別養子や配偶者の実子で被相続人の養子になったような場合、こうした制限はない。

 第3のステップは相続税の総額を計算することだ。遺産をどのように分けるかは、遺言書の内容や相続人同士の話し合いなどで決まる。しかし、どのように分けても税額の総額は基本的に同じになるよう、法定相続分通りに相続した“ものとみなして”計算する。

 第4のステップは、相続税の総額を各相続人が実際に相続した割合に応じて分け、相続人ごとの納税額を計算することだ。

 相続人によっては税額軽減や控除、加算がある。代表的なのが配偶者の税額軽減だ。被相続人の配偶者は、受け取る遺産が1億6000万円より少ないか、法定相続分より少ない場合、税額が全額軽減される。

(監修/松木昭和・松木税務会計事務所)