2015年から相続税が増税されるため、「相続対策」をうたった書籍や雑誌、セミナーが大盛況だ。しかし、安易な対策には思わぬ落とし穴が潜んでいる。「間違いだらけの相続対策」を特集したダイヤモンドQ編集部が、失敗事例から学ぶ相続ノウハウを紹介していく。
「早く対策をしないと、相続税が掛かってきちゃうと慌てたのがまずかったようです」
こう話すのは東京都世田谷区に一戸建ての実家があるMさん。数年前に父親が亡くなり、現在は母親が1人で暮らしている。姉とMさんがいずれ相続する予定だが、これまでは基礎控除が7000万円(5000万円+1000万円×2人)あり、相続税は掛からない見込みだった。
ところが今回の相続税増税で基礎控除が下がり、4200万円(3000万円+600万円×2人)となる。最近の地価上昇もあって、数百万円の相続税が掛かりそうなのだ。
そこでMさんが考えたのは、実家を二世帯住宅に建て替え、母親と自分たち一家が一緒に住むこと。たまたま雑誌で読んだ住宅メーカーの記事に興味を持ち、軽い気持ちで相談してみたら、あれよあれよという間に話が進んでしまった。
確かに被相続人(親)と相続人(子)が同居していれば、自宅敷地の評価額は最大8割減額される。そうすれば相続税は掛からずに済み、母も長男が近くにいて安心だ。時間もないし、取りあえず全体のプランをまとめ、それから姉に相談しようとMさんは考えていた。
しかし、母親から話を聞いた姉から猛クレームが入った。Mさんとしては姉には現預金を渡し、不足する分は生命保険などを利用すればと考えていたが、とにかく白紙に戻せの一点張り。姉弟の先行きに暗雲が立ち込めている。