2015年は戦後70年の節目でもある。増税再々延期という選択肢を断ったアベノミクスはまさに正念場を迎える。集団的自衛権ではいよいよ関連法の改正が行われ、具体的な姿が浮かび上がってくるはずだ。わが国のエネルギー構成をどうするかも決めなければならない。安倍・習会談で関係改善の糸口をつかんだ日中関係はどうなるのか。世界情勢を見れば、原油価格の暴落が暗い影を投げかけている。

平和でやさしいイメージの未(羊)年とは打って変わって、課題山積。そこで著名な経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。第11回は、メリルリンチ日本証券チーフ日本エコノミスト吉川雅幸氏の見通しをお伝えする。

きちかわ・まさゆき
1984年野村総合研究所入社。1999年6月朝日ライフアセットマネジメントに転じ、バイサイド・エコノミストを経験後、みずほ証券、三菱UFJ証券を経て、2007年11月より現職。1984年早稲田大学政治経済学部卒。ボストン大学MBAおよび経済学修士。

(1) 名目成長率が3%を超える

 高水準の企業収益率が設備投資と賃上げ・消費を支えるため実質成長率でみても1.5~2.0%に改善が見こまれる。加えて、円安を考慮しても原油価格が2割程度は低下することから、GDPデフレータが上昇(輸入デフレータが低下)し、名目成長率では3%を超える可能性がある。これは企業収益が大幅に改善する可能性を意味している。

(2)経常黒字が拡大に転ずる

 円安の効果が徐々に広がること(観光収支、所得収支の改善に加え輸出の増加)、原油安の効果、原発再稼働の影響等で経常収支の黒字が5~6兆円に拡大する可能性がある。これは円安に対する一定のブレーキとしてはたらくため、一部で懸念されている無秩序な円安が起こる確率は低い。