「大手ベンチャーキャピタルに新卒入社する予定でしたが、投資への知識を深めれば深めるほど、そこで働くことに違和感を覚えて内定を辞退したんです。リクルートに入って2年半ほど経った頃、本来やりたかったベンチャーキャピタルの仕事に近づけないと気づき、退職しました」

 佐俣氏は典型的な、「3年で企業を退職する優秀な若者」だ。一方、イベントの参加者である就職活動中の若者に聞くと、また違った意見が出た。

 ベンチャー企業を中心に受けている高橋君(仮名)は、大学でマーケティングを学んでいることもあり、「ウェブマーケティングの仕事に就きたい」と語る。本当は大好きな音楽業界に進みたいが「CDが全然売れない時代。音楽業界はシュリンクするばかりで先がない。一方、ウェブ業界はしばらく需要がある」と冷静だ。

「自分にとって好きなことと仕事にしたいことは違う。収入と興味があること、スキルを考えた上でベストバランスなのがウェブマーケティングの仕事だった。音楽とは違って特別な思い入れがない分野だから、他人と比べないでいられるし、もし失敗しても落ち込まないと思う」

 高橋君は、仕事は適度に関心のある分野を選びつつ、かつ時代に合ったことを仕事にしたいと考えていて、音楽の夢を追いかけることはしない。就活中とはいえ、バランスのとれた働き方を模索している若者と言えそうだ。佐俣氏のような飛び抜けて優秀な若者が独立していく時代、高橋君のような若者を辞めさせないための施策を考えるのが、企業の役割ではないだろうか。

28%の離職率が7年で4%まで低下
サイボウズが設けた選択型人事制度

 社員を職場に根付かせる施策を徹底的に行っている企業がある。グループウェア国内トップのサイボウズだ。多様な働き方を実現するための制度を充実させたことで、2005年に28%だった離職率を、2012年には4%まで下げることに成功した。7年間で驚異的な離職率の低さを実現した企業と言っていいだろう。

 制度を設けるまでの過程について、同社の青野慶久社長は「まず始めたのが、社員の話をきちんと聞くこと。すごく単純なことなのですが、みんなが求めている働き方が本当に多種多様だということがそこでわかってきた」「どんな人でも気持ちよく働ける環境をつくっていこうと、あらゆる人事制度をボトムアップ型で社員と一緒になって整えた。具体的には、制度が完成するまでのプロセスを社員全員に共有し、制度設計の段階から自分事化させること」と語る。