写真はイメージです Photo:PIXTA
仕事をしながら、親や配偶者など家族の介護・ケアを行う、ビジネスケアラー(ワーキングケアラーとも)が増えています。企業に雇用されている社員、さらには管理職や専門職として働く人が親の介護問題に直面した場合のインパクトは甚大です。親の介護の負担が増せば増すほど子の生活は一変し、「天国から地獄」といってもいいほどです。
本記事で紹介するのは、離れて暮らす母の介護に直面した会社員の事例です。実際にあったケースをもとに、起死回生の介護離職対策について考えます。災い転じて福となす。多くの現役世代が抱える老親問題や介護離職問題のヒントになるはずです。(NPO法人二十四の瞳、社会福祉士 山崎 宏)
顕著になる母の異変、増える心身の疲労
中小企業の人事部長である佐藤明美さん(50歳、仮名。以下、佐藤さん)。彼女の母・和子さん(85歳)は、夫を亡くして約10年、東京郊外の一軒家で一人暮らしをしていました。佐藤さんは2年前から、仕事の帰りや週末に時間を見つけては実家に通い、掃除や食事の準備、通院の付き添いなどをこなしていました。
「はじめは月に数回の訪問で済んでいましたが、徐々に回数が増えていきました。特に母から『泥棒に入られた』という電話がかかってくるようになってからは、仕事が終わるとほぼ毎日実家に立ち寄るようになりました」
いわゆる「モノ盗られ妄想」の始まりです。
「最初は『お財布がなくなった』というので一緒に探し、タンスの引き出しから見つかると『よかった』と安心していました。でも次第に『あなたが盗んだのね』『あの介護の人が盗んだ』と言うようになり、対応に苦慮するようになりました」
深夜に電話がかかってくることも増え、明美さんの心身の疲労は限界に近づいていました。
「休日も介護で潰れる。夜も落ち着いて眠れない。仕事中も母のことが気になって集中できない……。この状態があと何年続くのか、考えるだけで絶望的な気持ちになりました」







