年金の次は「健保危機」の到来である。「協会けんぽ」(旧政府管掌健康保険)が来年度以降の保険料引き上げを決定した。都道府県平均で1・14ポイントアップの9・34%。保険加入者の支払い保険料(雇用者と折半)は、平均年収386万円の場合、年間2万2000円も増える。
協会けんぽには、大手企業中心の「健康保険組合」がない中小・零細企業の従業員が加入している。デフレ下で給料が減り続けるなか、この保険料引き上げが家計に打撃を与えるのは確実だ。
しかし、背に腹は代えられない。協会けんぽの単年度赤字額は6000億円(2009年度)。06年度に5000億円あった準備金は底を突いており、最終的な赤字額は4500億円に達している。
「国民皆保険」の日本では、協会けんぽ、健保組合のほかに、農業従事者や自営業者が加入する「国民健康保険」、公務員や学校の教職員が加入する「共済組合」等がある。今回はこのうち、協会けんぽの引き上げが決まったわけだが、他の制度も状況は同じで料率引き上げは時間の問題だ。
しかも、健保組合や共済組合に関しては、後期高齢者医療費に対する支援金の負担割合を引き上げる法案が今国会に提出されている。健保組合を例にとれば、すでに年間2兆7377億円、保険料の44%(08年度)が高齢者医療制度に回されているが、それがさらに増えるというのだ。恵まれている健保組合は狙い撃ちされた格好だ。
「各組合が予算策定中だが、料率アップせざるをえない環境にあることは間違いない」(健康保険組合連合会)。医療制度を支えてきた「国民皆保険」の屋台骨が揺らぎつつある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 千野信浩)