それに加え、最近の組織では、ストーリーを語る相手がいなくなっている、と松本さん。かつては上司や同僚と酒の席で語り合い、自分の立ち位置や方向性を互いに確認しあうことができた。ところが、今はそれがない。個人の業務負荷が高く、「ノミニケーション」の時間どころか、仕事中に雑談することさえままならなくなっている。

 ストーリーを話す相手がいない人々は、ブログを作り、そこで「独白」を続ける。もちろん、書き込みをしてくれる読者はいるかもしれないが、彼らは顔も知らない赤の他人だ。自分のストーリーとは、直接耳を傾けてくれる身近な他人がいなければ、ただの独白に終わってしまう、と松本さんはいう。自分の立場や役割は、「関係者」の承認があって初めて自ら納得できるものとなるのだろう。

 自分は会社にとって何なのか、会社にとって自分とは何なのか。
それを見失ったとき、ストレスは耐えがたい重さとなって人々を襲うに違いない。

一度見失ったストーリーを再発見する

 逆にいうと、一度見失ったストーリーを再発見することで、病気を乗り越えた人も中にはいるかもしれない。

 「たしかに、うつの回復を経て『有意味感』を抱くようになる人は多いですね。何にでも意味がある、と感じられるようになる。やがて、『今』を楽に生きられるようになってきます」