脳卒中は一命を取り留めても重い障害が残ることも少なくない。だが、ほとんど障害が残らず、社会復帰している人もいる。その違いは何か。何が重要なのか、元患者の体験談を聞いてみた。その実例を『ダイヤモンドQ』編集部が紹介する。
脳卒中は、働き盛りの40~50代の人にも突然、襲い掛かる病気だ。命に関わり、障害が残る可能性も高い。
特に、くも膜下出血は発症すると、30日以内に50~60%が死亡。一命を取り留めても約50%に重度の障害が残り、元の通りに社会復帰できる確率は25%程度といわれる。
それでも、後遺症がほとんどなく、数ヵ月後には社会復帰できた人々がいる。その共通項は何か。
漏電を疑ったという前兆は
パソコン操作する手にしびれ
「このパソコン、漏電しているのかな」──。4年前に雑誌の編集長だった田中裕二さん(仮名)は、日曜日の午前中に自宅で仕事中、左手に違和感を持った。
買い替えたばかりの真新しいパソコンを開き、左手をキーボードに置いた途端に、指先から肘にかけて、ビリビリとしたしびれを感じた。
やがて、そのしびれは治まったが、2~3時間おきに再発するようになった。そのうち左手だけでなく、左半身全体がしびれ、「胃が猛烈に気持ち悪くなった」。
田中さんは、脳卒中を疑い、近所の脳神経外科の病院にタクシーで駆け込んだ。病院の待合室で検査結果を待っている間、もう田中さんは1人では歩けない状態になっていた。診断結果は脳梗塞だった。
現在も第一線で管理職として働く商社マンの鈴木晃さん(仮名)は5年前、残業中に脳内出血を発症した。
時計の針が23時を少し回ったところで、休憩しようと廊下の自動販売機で缶コーヒーを購入し、自分の席に戻る途中、突然、右手から缶コーヒーがこぼれ落ちた。
拾おうとしてもまったく力が入らない。何度、拾い上げても落としてしまう。唇の右半分もこわばり、動かなくなってしまった。
「尋常ではない」と感じた鈴木さんはオフィス内で一緒に残業していた同僚に声を掛け、救急車を呼んでもらい、近所の病院に運ばれた。