マネジメントのアクションが伴わないままでの
裁量労働導入は危険

 裁量労働を志向する者は、裁量労働が適用される職務へ就くための資質・要件を高めていき、時間労働を志向する者は時間管理される職務に就く。人事部はそれをかなえる人材リソースのマネジメントをしていく必要がある。

 個々の社員も、業界や企業に対して、裁量労働や高度プロフェッショナル制度を多用しているか、それとも単に長時間労働を強いているかの見極めをしていくことが有用だ。また、自分が、裁量労働が適したビジネススタイルを有しているならばそうした業界や企業でキャリアをつくるべきだし、時間労働に適しているならばその道を選ぶ、自らの意思でキャリアをつくれる環境整備が重要だ。

 これらのアクションは、それほど複雑でなく、仕組みと手順を進めていくことで、間違いなく実現できるが、その具体事例は別の機会に紹介したい。

 言うまでもなく、裁量労働か否かによらず、実質的な過長労働が発生していないかを把握し、勤務時間の長短によらず社員の健康状態のケアをしていく必要がある。

 言い換えれば、企業のマネジメントや人事部が、これらのアクションを実施できないならば、裁量労働や高度プロフェッショナル制度を導入してはならない。こうした実態に目をつぶって、1075万円以上という条件で議論されていることは、本質を外していると言わざるを得ない。このことが、今日の企業の人事部に対する諦念から発しているのではないことを望むばかりだ。


※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。