コーポレートガバナンスの強化は、安倍政権の成長戦略の大きな柱の1つになっている。近く制定が予定されている「コーポレートガバナンス・コード」は、その総仕上げの意味合いを持つものだ。本稿から2回にわたって、日本のコーポレートガバナンスの現状と今後の見通しについて考えてみたい。
「誰が」「どのように」
会社を経営するのか
コーポレートガバナンス改革の経緯については、既に、連載第42回で昨年実施された会社法の改正に関連して取り上げた。さらに、会社法の改正と相前後して閣議決定された「日本再興戦略・改訂2014」において、「持続的な企業価値の向上のための自律的な対応を促す」ためのアクションプランとして、「コーポレートガバナンス・コード」の策定が盛り込まれ、東証と金融庁が共同事務局となってその原案を取りまとめている。
しかし、こうしてにわかに脚光を浴びつつある「コーポレートガバナンス」とはそもそもどういう意味なのか、国民は正しく理解しているだろうか。
筆者は、「会社がなぜ活動しているのか」という、資本主義経済の根幹に関わる問題から考えを進めるのがわかりやすいと考えている。それは、その会社が「誰のために」「何を目的に」活動しているのかということであり、コーポレートガバナンスとは、その目的のために「誰が」「どのように」会社を経営するのがいいのかを考えることだ。
会社は「誰のために」「何を目的に」活動しているのだろうか。
昨今、CSV(Creating Shared Value)といって、「会社は、その社会的使命を考えて経営し、利益に結び付ける」という経営理論が広く認知されつつあり、その場合、会社は、環境などの社会的ニーズ、地域社会の要請、社員、債権者など、株主以外の様々なステークホルダー(利害関係者)にも目配りをしなければならないとされている。
実際、いわゆる「日本型経営」では、社員は、株主と同じくらい大事にされてきたし、日本的な「メインバンクシステム」の中では債権者である銀行が強い発言力を持ってきた。しかし、法律的に言えば、会社のオーナーは株主であり、その利益を損なうことは許されない。会社は、様々なステークホルダーに目配りしつつも、理論的には、「株主のために」「株主価値を守ることを目的に」経営されているのだ。