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前回はコーポレートガバナンスの本質について考え、機関設計の選択肢について説明した。その後、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が指名委員会等設置会社に移行すると表明したのはタイムリーであった。

連載第46回で論じたように、筆者は日本では銀行が率先して指名委員会等設置会社に移行すべきだと考えており、みずほに続きMUFGがその方向に舵を切ったのは英断だ。しかし、機関設計だけでコーポレートガバナンスが改善されるわけではない。今回は、機関設計と共に考えられるべき幾つかの論点についておさらいしてみたい。

利益相反で客観的評価を下す
独立社外取締役の存在

 前回論じたように、コーポレートガバナンスの本質は、「取締役会が社長を解任できますか?」であり、昨今は取締役会の役割について、経営者を監視する「モニタリング・モデル」が重視されつつある。しかし、社内取締役やその利害関係者だけで占められた取締役会が、「身内」のモニタリングをしてもお手盛りになるのは当然だ。そこで重要なのが、「独立社外取締役」の存在だ。

独立社外取締役」は、「社外取締役」の要件を厳しくしたものだ。すなわち、独立社外取締役は、経営陣と一般株主との利益相反問題に関し、一般株主保護の観点において、経営陣の利害から独立していなければならない。要するに、株主利益の観点から経営陣を客観的にモニタリングするものだ。

 一般株主と経営陣の間で利益相反が起きる可能性は常に存在する。たとえば、ある会社(A社)が別の会社やファンド(B社)から敵対的買収の提案を受けたとしよう。

 提案される買収価格は、ほとんどの場合、市場価格を数十パーセント上回る。B社は、「A社の現経営陣では企業価値が十分に上がっていない。自分たちが経営すればA社の企業価値を上げることができる」とか「A社の事業とB社の事業を統合して自分たちが経営すれば両社の企業価値が向上する」という意図で高値での買収を仕掛けてくるのだから、A社の経営陣はクビになるだろう。

 A社の経営陣にとっては「とんでもない提案」ということになる。そして、買収提案に反対の意見を表明した上で、買収防衛策を発動したり、株式の持ち合いをしている会社や銀行に株式の売却をしないように申し入れたり、ホワイトナイト(経営陣と友好的な別の買い手)を探したりする。