新しい年を迎えるにあたり、年末の各新聞や雑誌上では「2015年の予測」が盛んに行われていた。そうした識者の意見もさることながら、本稿では、「金融立国論」という視点から、日本国内において注目すべきトピックスをいくつか洗い出してみたい。
投資家寄りのガバナンス改革は
金融システムにも変革をもたらすか
日本企業のコーポレートガバナンスについて、今年間違いなく大きなインパクトを与えるのが、6月から東証の規則として導入が予定されている「コーポレートガバナンス・コード」だ。その詳細は次稿に譲るが、原案では、独立社外取締役の2名以上の選任や、政策保有株式の保有方針と議決権行使基準の策定・開示など、従来、経団連をはじめとする経済界に抵抗が強かった事項が並んでいる。
ちなみに、コーポレートガバナンス・コードは、昨年導入された日本版スチュワードシップ・コード(連載第43回)と対をなすものと考えられている。すなわち、日本版スチュワードシップ・コードが投資家に対して企業との対話を促すのに対し、コーポレートガバナンス・コードは、企業がどのようにして「投資家の最低限の期待」を満たすのかという性格のものだからだ。すなわち、高度成長期以来、メーンバンクが経営の主導権を握りがちであった日本企業のガバナンスを、より投資家寄りのガバナンスに変化させようとするものだと言ってよい。
たとえば、独立社外取締役が増えることは、ともすれば企業の「内部の論理」で動きがちだった取締役会に規律を与えることになる。政策保有株についての厳格な方針開示は、持合いの解消を促し、銀行による企業の経営支配を終焉に向かわせるだろう。
もともと、債権者である銀行は、リスクをなるべく取らず、企業の成長よりも自分の貸付債権の保全を求めるのに対し、株主はある程度のリスクを許容しつつ、企業の成長による果実を求めるのであり、そこには利害相反がある。日本企業が成長を取り戻すためには、企業経営者が株主目線に立たなければならない。それは、「銀行から投資家(株主)へ」というパラダイムシフトが起きることを意味する。