ドイツ・フランクフルトの中心部から東へ車で10分ほど行くと、かつて欧州最大規模の青果市場だったエリアがある。このマイン川沿いの場所に欧州中央銀行(ECB)は新本部ビルを建設し、昨年11月に移転した。

ドイツ・フランクフルトにある欧州中央銀行の新本部ビル
Photo by Izuru Kato

 先日訪問させてもらったが、周辺に大きなビルがないこともあり、高さ185メートルの新タワーが圧倒的な威容を誇っていた。その足元には、1920年代に建造された旧青果市場の外観が残され、横に長大なビルが融合されている。ここはナチス時代にユダヤ人を収容所へ搬送する前の基地として使われていたため、ホロコースト記念館も開設される予定だ。

 高層ビル上階の展望フロアからは遠くの山並みも含め、フランクフルト周辺の壮大な景色が一望できる。このECB本部の建設費は当初予算を大幅に上回る11.5億~12億ユーロといわれている。「ギリシャに緊縮財政を要求しながらこんな豪華な設備を造っていいのか」との声もちまたにはあるようだ。

 しかし、(1)従来の本部は賃貸だったので自前のビルに移る方がコストは下がる、(2)建築計画が始まったのはユーロ危機が勃発するはるか前、ユーロの前途は洋々と思われていた2002年だった、(3)ホロコースト関連の事情で建設が中断し、インフレもあって工費がかさんだ、といった事情がある。

 ちなみに、量的緩和策を決定した1月の理事会終了後にマリオ・ドラギECB総裁が記者会見場へ向かおうとしたが、エレベーターがなかなか来なかったと多くのメディアが報じていた。実はこのエレベーター、エネルギー効率を高めた自慢の方式が採用されているのだが、使い勝手があまりよろしくないらしい。