2015年は戦後70年。この節目の年に安倍晋三首相は、未来志向の新たな談話を発表すると宣言している。中国や韓国を筆頭に諸外国は日本が右傾化していると見ていおり、新たな談話ではどのような内容のものが出てくるのか、注目が集まっている。とりわけ中国や韓国は、安倍首相の歴史認識を取り上げ、日本批判を繰り返している。新たに出される談話も、日本、中国、韓国を中心とした東アジア情勢に大きな影響を与えることになりそうだ。ここ数年の日中韓関係を整理し、談話が与える影響について専門家のコメントなどから考えてみたい。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

世界から注目を集める
戦後70年の安倍談話

「日本の歴史認識問題の最大の受益者は中国と韓国。他の国との外交がやりやすくなるからだ。日本が歴史認識問題について取り組めば取り組むほど、中国と韓国にとってはプラス。日本にとっては外交上、不利になるばかりだ」

 こう話すのは、日本在住の中国人近現代史研究者だ。

 これまでもそうだったように、中国と韓国は現役閣僚の靖国神社参拝問題に代表される歴史認識問題を、外交上の格好のネタとしてきた。安倍晋三首相をはじめとした安倍政権の現役閣僚の歴史に関する発言や取り組みは、アメリカや欧州での「日本非難外交」の“エネルギー”でしかないというのだ。

 中国は主に靖国神社参拝を、韓国は従軍慰安婦に対する日本の認識を問題視しており、中韓に若干の違いはある。だが、両国間には日本の歴史認識を非難する同志とも言うべき連帯感が生まれ、接近している。

 2014年7月に、中国の習近平国家主席が日本や北朝鮮よりも先に、国賓として韓国を訪問し、朴槿恵大統領と満面の笑みで握手をしたことが、それを象徴しているという報道も見られた。

 そんななかで今年、安倍首相が意欲を見せている、戦後70年を機に出す新たな談話。当然、中国と韓国は大きな関心を示している。冒頭のコメントのように中国と韓国は手ぐすね引いて、「安倍談話」を待っているのかもしれない。

 中国と日本は今や世界のGDPの第2位と第3位を占める経済大国。東アジアだけではなく、世界に対して経済や安全保障などにおいて大きな影響と責任を背負っていることは、外交や経済の専門家の誰もが口を揃える。それだけに、安倍談話の内容には世界から注目が集まっている。