【イノベーション・技術革新】
他と同じことをしていては新しいものは生まれない

松江 先ほどの世界一の技術についてですが、最先端の技術がキーだと、多くの人が頭ではそう思っていますが、なかなか実現するのは難しい。それを可能にするためにどんな手を打っているのでしょうか。

 最初はやはりお客さま主導型、お客さま密着型ということではじめました。お客さまの要求をよく聞いて、それについていくやり方ですね。ところがそれだけじゃ厳しい。そこで一つは開発者と技術者に世界一流の環境を与えて、失敗してもいいから、どんどんやらせること。うちもまだまだ足りないけれども、技術者を日本だけじゃなくて、世界に求める考え方も重要ですね。

ニューヨーク州・IBM社との研究開発プロジェクト(アルバニー・ナノテクプログラム)でスピーチする東社長

 それと他社と同じことをやらないことですよ。同じことをやるのは常に優等生的な発想。日本の教育がそうですけどね。だから非常にユニークな技術で勝負することにやりがいを見い出す開発者、技術者を育てること。言うは易しですが、なるべくそう仕向けていくことです。そしてユニークな技術でお客さまのニーズを創造できるようになれば大成功です。

松江 今お話いただいた中の「失敗してもいいからどんどんやらせる」とか、「他は真似しないで、他にないものだけどやってみよう」というのは、経営者としてリスクを覚悟しなければいけませんよね?

 トップが多少無理をしても出る杭を伸ばすようにサポートする姿勢を鮮明に出していくことです。既存の技術の延長線とか、改良型の技術でないものは、唐突で違和感があるわけで、みんなから猛反対されることがほとんどです。それでも、「いいじゃないか、やろうよ」とサポートしてあげないと新しいものは生まれてこない。

松江 多くの会社が「イノベーション」と言いながら、実は組織、特に上層部がその種を潰しています。トップが強い会社は「後ろ盾をするからやれ」と言えますが、大企業の合議制だとそのリスクが取れず、結果的に小さくまとまってしまうケースが多い。それができる会社とできない会社の差は大きいと思いますが、東さんは常にそのリスクをとっておられる感じがします。

 たとえば、90年代後半に、ニューヨーク州立アルバニー校で、弊社とIBM社とニューヨーク州がそれぞれ約100億円ずつ出し合って研究施設、プロジェクトをつくりました。当時、そんなことをする日本企業はなかったので、「変わった日本企業だ」と珍しがられたりもしましたが、優秀な研究者や業界の有力企業と共同研究を行う機会を得ることが必要な投資と考えました。