「北陸新幹線が通っても、富山は通過されてしまうのではないか」
3月14日、北陸圏待望の北陸新幹線が開通した。東京から富山までは最速2時間8分、金沢までは2時間28分と、それぞれ最大66分、83分も所要時間が短縮。利便性が格段にアップすることで首都圏からの観光客が増加するのは間違いない。しかしその一方、冒頭で触れたように、開通地域である石川県と富山県の格差が心配されているのも事実だ。
実際、「北陸新幹線が通ったら一度は金沢に行ってみたい」という声はよく聞く一方で、お隣の「富山に…」と言う人はあまり見られない。さらに「祝!北陸新幹線開通、加賀百万石の旅」というような金沢にスポットを当てた番組や雑誌特集ばかりが目立ち、どうも3つも駅ができる富山の存在感が薄い(石川県は金沢1駅だけなのに…)。船井総合研究所・上席コンサルタントの岩崎剛幸氏は、金沢にスポットが当たるのが止むを得ない理由をこう分析する。
「今回の新幹線開通は、金沢のようなブランド力のある街が終着点となった初めてのケースといっていい。実際、金沢には兼六園、金沢21世紀美術館、近江町市場など挙げればきりがないほどメジャーな観光地がある」
ブランド総合研究所が発表した『地域ブランド調査2014』でも金沢は9位にランクインしたが、富山県内の都市はランク外。47都道府県でみてみても、石川県は11位なのに対し、富山県は23位だ。こうした事実もあり、富山県の関係者から「富山は観光客から(新幹線で降りることなく)通過されてしまうのではないか」という懸念の声が聞こえてくるのだろう。
過去、長野新幹線が開通した際は、首都圏への人口流出や長野の地方事務所を廃止する企業が続出するなどストロー現象が加速する一方で、観光へのインパクトは大きくなかった経験も不安要素になっている。しかし、前出の岩崎さんはこうした懸念を一蹴する。
「ブランド力のある金沢に観光客が集まるのは間違いない。しかし私は、今の時代だからこそ、懸念されているほど富山がスルーされることはないと考えています。もしこれが10年前なら富山も深刻な事態に陥っていたかもしれませんが……」
一体、何が今と10年前とで違っていると言えるだろうか?