ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
経営のためのIT

IT投資の方針を決める
1枚のシートの作り方

――IT戦略施策のビジネスポートフォリオの作成

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第38回】 2015年3月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2
nextpage

 そこで、これらに対する具体的な評価項目および具体的質問項目を設定し、これらをスコア化するための施策評価表を中間成果物として作成する(図1)

 この例では、「経営上の重要性」を1つの評価軸とし、その評価項目として「経営戦略における位置づけ」「影響度」「対応の必須度」を設定している。

成長性の高い分野は
予算獲得の発言力が低い

 「影響度」の具体的質問項目の1つに「成長・変革が期待されている分野に対する施策である」をあげているのは、現時点では規模の小さな事業であったとしても経営者としては成長を期待している事業であり、そこにこそIT投資を含む経営資源を傾注すべきと考える分野を過小評価しないためである。

 これに対して、現時点の主力事業であり、人員や予算を豊富に持っている事業部門は社内の発言力が強く、その事業に対する投資の影響度が高いと判断され、投資が優先されるということが往々にして起こりがちとなる。このような社内力学をできる限り排除し、経営者の意図を的確に反映することが評価項目の設定におけるポイントといえる。

 また、「対応の必須度」を評価項目としてあげているのは、経営戦略上の位置づけや期待される効果はそれほど大きくなくとも、法令や制度の変更への対応など、必須で実施しなければならない案件があるためである。

 次に「期待される効果」をもう1つの評価軸とし、「競争優位性の維持・向上」「業務遂行上のメリット」「将来のリスクの低減」を評価項目として設定している。これらは、一般的にIT戦略施策やIT投資案件の効果を説明する際によく用いられる評価項目といえるだろう。

 これら2軸6項目に分類される12の具体的質問に対して、「まさにあてはまる」「ややあてはまる」といった4段階の評価を記入することで評価をスコア化することができる。この時点では評価の正確さを厳密に問う必要はなく、経営者やIT部門長の独自の考えや企画担当者間の合意によるものであっても構わない。

 そしてもう1つの重要な評価項目である投資規模についても、この時点で詳細な費用見積もりの裏付けがなくても構わないので、概算の規模感を記入する。戦略施策の位置づけを左右する項目は、実行の難易度、想定期間、効果が得られるまでの時間など他にも多数存在するが、ここで重要な点は、経営者の目線でビジネスの観点を重視した評価項目に絞り込むことである。

previous page
2
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


経営のためのIT

日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

「経営のためのIT」

⇒バックナンバー一覧