2014年2月、三井化学は大型3事業の事業再構築を表明した。なぜ同社は抜本改革を行わなければならなかったのか。そして事業の“膿”は出し切れたのか。
今年2月24日、三井化学の茂原分工場(千葉県)と市原工場(同)から、同じ三井化学の鹿島工場(茨城県)に足を運ぶ従業員の存在が大村康二副社長に伝えられた。両工場の従業員の目的は、鹿島工場の従業員にそれぞれの工場の職場環境などを紹介することだったという。
大村副社長は喜びをかみ締めるが、まさに現在の三井化学を映し出す出来事である。
1年ほど前の2014年2月6日、三井化学は臨時の経営概況説明会を開き、3事業の再構築を発表した。対象となったのは、クッションなどの原料になる「ウレタン」、DVDなどの原料である「フェノール」、ポリエステル繊維などの原料となる「高純度テレフタル酸(PTA)」の大型事業だ。
3事業が再構築の対象になった理由は、14年3月期の営業損益の内訳を見ればよく分かる。これらが属するウレタンと基礎化学品セグメントが合計で226億円もの赤字を出し、その他のセグメントが稼ぎ出す475億円の利益の約半分を食いつぶしていたからだ。
振り返れば、1997年に三井石油化学工業と三井東圧化学の合併により発足して以来、三井化学は自身が強みを持つ事業として、この3事業に注力してきた。特にフェノールは「コア中のコア」とされていた事業である。
ところがリーマンショック後、中国が需要を大幅に超える大増設に動いたことで、決定的に潮目が変わった。汎用品を中心に市況が大暴落したのだ。
中でもPTAには、人口増加によるポリエステル繊維の需要増を狙って巨額の投資が流れ込んでいる。それだけに、増設計画を入れると供給能力は世界需要の約1.6倍にもなり、値崩れが著しい。