「化学」産業は現在、事業ポートフォリオの大きな転換期に差し掛かっている。競争環境と需要構造の変調で、稼ぎ頭の石油化学と電子材料の収益性・競争力の低下が顕著に出ているからだ。したがって、中長期成長力のカギを握るのは、事業ポートフォリオ転換の成否とグローバルに強い事業を構築できるかどうか。その点で、住友化学、日本ペイント、ダイセルに注目している。

産業構造:
事業ポートフォリオの大転換期に

えのもと・たかし
素材チームリーダー。2001年東京大学経済学部卒。化学17 社、鉄鋼・非鉄16社をチームでカバーする。2001年メリルリンチ日本証券入社。当初より株式調査部に所属し、食品・外食、造船・プラント、繊維など様々な産業の日本株式調査に携わる。

「化学」という言葉は非常に広範囲にわたる意味を内包し、具体的なものを想像しにくい。例えば、自動車とか機械ならイメージはすぐにわくと思うが、化学と言われてイメージが思い浮かぶ人はほとんどいないと思う。

 化学は様々なものを包摂し、化学産業という場合は石油化学、電子材料、農薬、医薬、塗料、工業ガス、インキなど多様なものを含んでいる。化学品は基本的に最終製品ではなく、自動車、電気製品、建築、農作物など最終製品の部材に使用される、いわゆるBtoB主体の素材である。

 その「化学」産業は現在、事業ポートフォリオ(事業構造)の大きな転換期に差し掛かっている。多くの日本の化学企業では複合的な事業ポートフォリオを有する形態が主流であり、石油化学など汎用品と、電子材料、医薬・農薬などファインケミカルの複合体となっている。

 石油化学と電子材料を主体にした事業構造を有する企業が日本の化学産業には多い。それは、アジアでは経済成長に伴って日用品、自動車、電機産業向け主体にプラスチック需要が旺盛なこと、アジアは電器産業の集積地であり電子材料の開発が活発で、需要の伸びが高いこと、が理由であろう。

 だが、この化学産業の2大事業が現在、岐路に差し掛かっている。具体的には、競争環境と需要構造の変調で収益性・競争力の低下が顕著に出ていることである。日本の化学企業は収益性低下が明らかなこの2大事業からポートフォリオを転換する時期を迎えていると見ている。