売上高3兆円。国内総合化学最大手の三菱ケミカルホールディングスは、多角化による拡大戦略に突き進み、日本流化学メジャーを目指した。しかし現状、思うように実を結べていない。そこには規模至上主義をよしとするおごりがあった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)
「合弁相手との資本構成を抜本的に変えるなら今がチャンスだ」
「いや、まだもうかる。このままでいこう」──。
さかのぼること2011年、三菱ケミカルホールディングスの中核会社、三菱化学の経営幹部たちが集う会議室では、主力製品の一つであるテレフタル酸の事業再構築について議論が詰められていた。
ポリエステル繊維の主原料として使われるテレフタル酸は同社の前身、三菱化成時代から社長を何人も輩出してきた伝統部門だ。事業規模は2500億~3000億円とグループ内でも群を抜いた大きさで、アジアでトップシェア。長らく花形事業だった。