「スーパードライ」にも
使われている技術を活用

 一つは、言わずと知れた糖質の低減だ。ビールは、麦芽や副原料由来の糖質をビール酵母の力でアルコール発酵させた飲料である。通常すべての糖質が分解される前に発酵が止まるため、製品には相応量の糖質が残る。

 そこでいかに麦芽由来の糖質を分解し、酵母に食べてもらうか。分解を促すか。山口さんが編み出したのが、独自の糖化技術だった。糖化とは、麦芽のでんぷんを糖に分解する工程をさすが、そこで「大きなサーロインステーキを、小さな子供が食べやすいような大きさ、形のサイコロステーキにするイメージ」(山口さん)で、酵母が食べやすいように糖の分解を調整。むろん小さくすればいいというわけでもなく、さまざまな試行錯誤、紆余曲折を経て最適値を生み出した。

 さらに、なるべく長く、かつ迅速に発酵が進むよう、独自の高発酵技術も工夫。看板商品である「スーパードライ」でも活用している、同社ならではの高発酵技術の知見も活かし、「通常のビールよりも1割程度高い発酵度を達成することに成功しました」(山口さん)。

 ただし、これらの技術で糖質の低減が達成できても、2つ目の命題となるビール本来の美味さをも実現するものでなくては意味がない。実は寺門さん曰く、「麦芽の比率や糖質オフの『%(パーセント)』について、数値目標はあえて設定しませんでした」。数値ありきではなく、とにかくビールユーザーが満足する味を実現する。それが開発にあたっての最大の目標だったからだ。

 そして高い目標を掲げられるほどに燃えるのも技術者魂だ。糖質オフの数値を最大限に引き上げつつ、同時にいかに麦芽本来のコクと旨みを引き出すか。もちろんコクがあればいいわけでもない。麦芽使用率が高くなるほど重くなりがちな味に、キレの良さ、爽快さを両立させることも重要なポイントだ。

 実は、プレミアムビールと呼ばれる重厚な味のビールは、いくらビール好きでも毎日ゴクゴク飲むようなものではない。対象となるのは、「夕食とともに、ビールを日常的に飲む」ヘビーユーザーである。飲み飽きないウマさを実現するべく、麦芽と糖質オフの比率、そしてコクとキレの黄金バランスを求め、山口さんが作った試作品の数は100近くに及んだ。

 こうして生まれた試作品を元に、マーケティング部門と開発部門のチーム内で、意見のキャッチボールを何度も繰り返し、「これ」というものを試飲の調査にかける。しかし、開発チームの奮闘ぶりに対し、ユーザーの反応も一筋縄でいくものではなかったという。

「最初の2年間ぐらいは、『こんなのビールじゃない』『美味しくない』と痛烈な意見ばかりで、チーム一同、ガックリくることもたびたびでした」と寺門さん。「やはりビール商品で糖質オフは難しいのでは」という声が挙がり、開発を一旦中断したこともあったという。