ホンダとパイオニアが8月末、カーナビの道路交通情報データの相互活用を年内開始すると発表した。

 通常、カーナビに表示される道路交通情報は、VICS(※1)により配信される。しかし、目的地が県境を越える場合に目的地情報が反映されないことや、設置道路のカバー率が低いなど(全国の道幅5.5m以上の道路約83万kmに対し、センサー設置道路の距離は約7万km)、使い勝手は今ひとつだ。

 そこで「走行している車から情報を集める」システムが2003年9月、自動車メーカーとして世界で最初にホンダにより開始された(※2)。これは「メンバーの車が、ある区間を走行するために要した時間や速度などの走行データをサーバーにアップロード、サーバーで編集し道路情報として他メンバーのカーナビに配信する」もので、その後他社も同様のシステムで追随している。

 このシステムでは、メンバーの車が走るほど交通情報がサーバーに蓄積されるので、日々情報の精度が向上する。また最新の渋滞情報を配信することによる渋滞の減少から、車の走行時間が短縮されることで無駄なCO2の排出を抑えるという利点がある。

 ただしこのシステム、現在は自動車・カーナビ各メーカーが、それぞれ自社製品ユーザー向けに提供しているために、自分と同じメーカーのカーナビや自動車を使っているドライバーが少なければ、送られてくる情報の精度が低いケースもある。

 よって、ユーザーにとっての利便性向上には、業界全体のデータの共有化が急務だ。が、各社の思惑も絡み、その実現は困難かに思えた。

ホンダとパイオニアが共有するデータは、区間ごとの走行所要時間情報のみに限定されており、その情報の解析処理ロジックは異なる。つまり配信される情報には、両社それぞれのノウハウが付加される。

 そこで、今回のホンダ、パイオニア両社のデータ相互活用の発表である。

 「システムの今一番の課題としては、突発的な渋滞への対応です。解決策として多くのリアルタイムのデータが必要なため、協力し合うことになりました」(菅原愛子氏/Honda・インターナビ推進室)。

 両社は以前からOEMを行なうなどの協力関係にはあったが、メーカーの垣根を越えたデータ共有の実現は、まさに画期的だ。

 もし、全ての企業の垣根を越えたデータ共有が可能になると、日本の道路情報の精度は飛躍的に向上するに違いない。利便性向上は車の購買意欲に直結し、メーカーにとっても損な話ではないだろう。ここは呉越同舟ならぬ呉越同車に期待したい。 

(※1)VICS(Vehicle Information and Communication System/ビックス)道路交通情報通信システム。VICS車載機累計出荷台数は21,943,947台(2008年度第I四半期まで)。

(※2)ホンダのインターナビ・フローティングカーシステムが収集したデータは約4億5千万キロ。会員は約72万人(ともに2008年8月現在)。