2005年の販売開始以来、10年にわたり市場を独占していたMSDの男性型脱毛症(AGA)治療薬「プロペシア」。

 その日本初のジェネリック医薬品(後発品)「フィナステリド」(一般名)が、製薬世界最大手ファイザーから4月6日に発売された。後発品とは新薬の特許が切れた後に競合他社から投入される同じ有効成分の薬で、低価格が売りだ。

「マイナス影響は避けられない」。MSD関係者がそうため息をつくように、一部では早くもプロペシアへの強い逆風が吹いている。

低価格攻勢で「プロペシア」(上)に挑む、ファイザーの「フィナステリド」(下)。序盤戦は売れ行き好調という 写真提供:MSD、ファイザー

 発売日からの1週間。プロペシアの格安販売で知られる東京・新宿ウェストクリニックでは、プロペシアの販売数が約3000錠だったのに対し、ファイザーの後発品はなんと約4万錠。10倍以上の大差がついたという。

 その理由は、言わずもがな、価格にある。自由薬価のため、価格は個々のクリニックの値付け次第だが、東京都内のプロペシアの相場は1カ月分(1ミリグラム28錠)で7000~8000円だ。これに対し、ファイザーの後発品は5500~6000円と、3割ほど低く抑えられている。

 AGA市場争奪の緒戦においてファイザーは、自社のED(勃起不全)治療薬「バイアグラ」で昨年に他社の後発品が登場して被った痛手の敵を討った格好だ。

 だが、ファイザーが発売した後発品が、200億円前後とされるプロペシア市場をこのまま一気に塗り替えると考えるのは早計だ。

 すぐに効果を実感できるED治療薬と違い、フィナステリドはプロペシアと同じく、効果を実感できるまで半年以上の服用が必要となるため、ヘビーユーザーほど切り替えへの心理的抵抗が大きいからだ。

「プロペシアで効果を実感している人が切り替えるには、月額2000円程度の差では不十分だ。だが、さらに他社からも後発品の投入が続き、一層の価格破壊が起きれば、シェアを覆せる」とは当のファイザー関係者だ。