モバイルから高利益の半導体へシフト
経営体制の見直しを進めるサムスン

―― 一方で、新興国企業の台頭などによって、サムスングループをはじめ財閥
系企業の成長力も落ち始めています。財閥自身、経営体制の見直しを迫られそうですね。

 韓国企業の強みは、汎用品を中心とした大量生産で、サムスン電子をみても、自社のオリジナル製品は基本的にありません。新しく市場に出た製品をベースに、世界の各市場で必要とする機能をつけ、なおかつ生産コストを引き下げて大量生産することで成長してきました。こうしたやり方は、いずれ新興国企業に追いつかれてしまいます。

 ただ、韓国企業がこのまま失速を続けるとは思いません。サムスン電子がいい例です。サムスン電子のセグメント別営業利益を見ると、2014年初頭くらいまで、営業利益の7~8割程度をITモバイル(スマートフォン)が稼いでいました。しかし、同部門の営業利益は2013年7~9月期をピークに減少し、2014年7~9月期には前年水準の4分の1程度に落ちました。ただし、これは以前から予想されていたことです。中国企業がつくる低価格製品の台頭やモバイル市場の成熟によって、利益が減少するのは避けられないことです。

 むしろ注目すべきは、デバイス(半導体)部門の利益が伸びていること。2014年10~12月期は営業利益の約60%をデバイス部門が占めています。中国企業が追い上げるなかで事業の再構築を進めていることが見て取れます。

 また、業績が悪くなったとはいえ、日本企業に比べてサムスン電子の利益水準はまだまだ高い。そんななかでも、昨年来従業員の賃金凍結や事業再編を進めています。危機感をもって経営体制の見直しを進めている点を、低く評価してはいけないと思います。

 ただし今後は、韓国の大企業のなかで、変化に対応できる企業とできない企業との間で、明暗がはっきり分かれてくるのではないでしょうか。

――韓国経済の現状と課題が、よくわかりました。最後に、日韓関係をどう見ていますか。日韓はお互いに、重要なビジネスパートナーの1つです。足もとで、韓国経済の減速や日韓関係の悪化が両国の経済に与えている影響は、どうなっているのでしょうか。

 ドルベースで見た韓国の対日貿易額は、2012~2014年にかけ、3年連続で減少しています。2014年は前年比でマイナス9.2%になりました。対日輸出が減っているのは為替や両国関係の悪化の影響ですが、不思議なのは普通なら円安ウォン高の中で増えてもおかしくない対日輸入まで減っていることです。これは韓国の輸出が伸び悩んだため、日本からの生産財の輸入が減少したためと考えられます。

 また、日本人の韓国訪問客も激減しています。前年比二桁減が続き、回復の兆しはみられません。日韓関係の悪化に加え、円安・ウォン高が進んだことで、日本から韓国へ観光や買い物に行く魅力が薄れています。

 対韓投資は、2013年、14年と前年比マイナスになりました。2012年に急増した反動と、超円高が是正され、韓国投資のメリットが以前より低下したためだと思います。