現在、日本と韓国との政治・外交関係は「最悪」に近い状態にある。関係の悪化には歴史認識に関わる問題が直接的に影響していることはいうまでもないが、今日の日韓関係を理解する上で、両国を取り巻く環境の変化にも注意する必要がある。日韓関係が冷え込み、それが経済にも影響を及ぼし始めた今、わたしたちに必要なことはこうした事態にいたった経緯を冷静に分析した上で、改めて両国の「共通利益」を再認識していくことである。
現在、日本と韓国との政治・外交関係(以下、「関係」)は「最悪」に近い状態にある。関係改善に向けての修復力が働かないばかりでなく、その糸口さえみえない。
中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所入社し、現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。専門はアジアのマクロ経済動向分析、韓国経済分析、アジアの経済統合、アジアの中小企業振興など。
関係の悪化には歴史認識に関わる問題(従軍慰安婦、歴史教科書、靖国神社参拝など)が直接的に影響していることはいうまでもないが、今日の日韓関係を理解する上で、両国を取り巻く環境の変化にも注意する必要がある。
一つは、冷戦体制の崩壊である。冷戦体制が続いていた時期には中国、ソ連、北朝鮮など共産主義圏に対して、安全保障面で韓米日の連携が不可欠であったが、その崩壊により三国を連携させる力は弱まった。もう一つは、グローバル化の進展と中国の台頭である。グローバル化が進む過程で、韓国にとって貿易面における日本のウエイトが一段と低下した一方、中国のウエイトが上昇した。日中の「重要性の逆転」に伴い、韓国政府の対日外交姿勢に変化が生じるようになったと考えられる。
以下では、日韓の経済関係を両国を取り巻く環境変化のなかでとらえ直し、経済関係を含む今後の両国関係のあり方について検討したい。