「Color Genomics」が提供するのは、シリコンバレーの消費者直結型(Direct-to-Consumer:DTC)遺伝子検査サービスの老舗である「23andMe」と同じように、オンラインで遺伝子検査のキットを購入し、唾液を自分で採取して返送するだけという手軽なシステムです。

 ただし「23andMe」は本連載でも述べたとおり、2013年11月22日に米国FDA(食品医薬品局)から遺伝子検査サービスの中止命令を受けています。理由は、1)非常に重要な情報をカウンセリングなしに消費者に提供する、2)診断精度への疑問などの問題が認められたためです。そして、2013年12月5日、同社のサービスは中止となりました。今年の初め、希少遺伝疾患のブルーム症候群に限って遺伝子検査サービスは承認されましたが、他の疾患に関する遺伝子検査サービスはまだ承認されていません。

http://time.com/3716133/fda-genetic-screeing-test-bloom-syndrome/

 そこで、「Color Genomics」は、検査に医師を介在させることで「23andMe」の問題点を克服しました。

1) 非常に重要な情報をカウンセリングなしに消費者に提供する:「Color Genomics」は、検査の依頼と結果の説明に医師が関与します。検査を依頼するには、かかりつけの医師か、「Color Genomics」の医師に依頼する必要があります。もし消費者がウェブサイトで検査の依頼をすれば、「Color Genomics」の医師に結果が送られ、医師が結果を評価します。消費者は、結果を受け取った後、「Color Genomics」の認定遺伝カウンセラーと連絡をとることもできます。そして結果に基づいて、がんの発症の予防の計画を立てます。

2) 診断精度への疑問:「Color Genomics」の遺伝子検査は、すべての臨床検査に適用されている連邦規制の基準の下で行われます。また、カリフォルニア州で、検査室の質を保証するためのCLIA(臨床検査改善修正法案、Clinical Laboratory Improvement Amendments)の認定を受けています。

 「23andMe」は、254種類の疾病リスク予測、自分のルーツ(祖先・親戚探し)を判定するための遺伝子検査でしたが、「Color Genomics」は、乳がんと卵巣がんのリスクを知るために、BRCA1およびBRCA2を含む19の遺伝子(ATM、BARD1、BRIP1、CDH1、CHEK2、EPCAM、MLH1、MSH2、MSH6、NBN、PALB2、PMS2、PTEN、RAD51C、RAD51D、STK11、TP53)を分析します。「Color Genomics」は、ペンシルバニア大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校と医療従事者と連携し、BRCA1遺伝子を発見したワシントン大学のメアリー·クレア·キング教授を含めて、遺伝学の専門家らの共同研究者の協力も得ています。

従来1500〜4000ドルした検査が
なんと249ドル(約3万円)で受けられるように!

 さて、DTC遺伝子検査サービスに対して、新型出生前診断や、BRCA1とBRCA2など将来の発症可能性を検査する発症前診断、遺伝病の保因者であるかを調べる保因者診断などは、病院・診療所で行われる“医療における遺伝学的検査”です。これらの検査は、遺伝子の特許の問題で高価なため、多くの米国人は受けることができませんでした。米国では、BRCA1とBRCA2遺伝子の検査は1500ドル〜4000ドル(1ドル=120円で換算すると、約18万〜48万円)かかりました。日本でも、その費用は約20万〜30万円と非常に高価です。ところが「Color Genomics」の検査にかかる費用は、249ドル(約3万円)です。

 連載第2回と第3回の記事のように、米国では2013年の米最高裁の「自然に存在する遺伝子は特許対象とはならない」という判決後、特許の拘束が緩くなりました。従来の遺伝子特許による遺伝子検査の独占が解禁されて、「Color Genomics」のような新たな遺伝子検査のビジネスモデルが生まれたのです。