私の友人は、それぞれの評価者から話を聞くことに決めた。まずは直属の上司である係長から話を聞いた。係長はプロジェクトの責任者だった。その係長は、彼の仕事についてはすべて自分が面倒をみた、彼は割り当てられた仕事はきちんとこなした、と主張した。プロジェクトは成功し、それは彼の功績が大きいと主張した。

 そして、隣の課長が、彼に対して低い評価を与えたのは、不当だと訴えた。その係長は昨年隣の課長の部下を査定したとき、低い評価を付けた。今回の自分の部下への低評価はその報復だと説明した。

 友人はその忠告に礼をいって、それを考慮して隣の課長のヒアリングに臨むと、係長には告げた。だが、係長のいうことを鵜呑みにはできない。友人は、判断を保留した。

 翌日、隣の課の課長のヒアリングを行った。課長は理路整然と、その社員が携わっていたプロジェクトで、彼ひとりでは仕事がほとんどできなかったことを説明した。彼は、自分の担当の仕事ができず、後輩に頼んで代わってもらったり、自分の彼女に手伝ってもらったりしていた。

 報告書も、かつて同じようなプロジェクトを手掛けた先輩が書いたものをほぼ丸写しにし、わずかに改変しただけだった。プロジェクトそのものは成功に終わったため、彼自身に割り当てられた仕事も、見かけ上は問題なく片付いた。だが、課長は、彼のプロジェクトへの貢献は、ほぼ皆無に近いという厳しい見方をしていた。

 何よりも課長が心配していたのは、このまま彼に高評価を与えて責任ある仕事を回してしまったら、あとあと取り返しのつかないことになる可能性が高いし、彼にとっても良くない、ということだった。彼は、性格は悪くないし、仕事を理解するのは少し遅いが、努力家なので、辛抱強く見るべきだと話していた。

言い分が通らなかった課長の逆襲
長文メールの驚くべき中身

 友人の視点からすると、隣の課長の言い分のほうが説得力があった。それに課長は、係長のことには一切言及しなかった。

 友人はもちろん、その社員自身にも、そして他の同僚からも聞き取りを行った。そのうえで、査定としては隣の課長に近い判断を下し、文書で、その社員の上司である係長に通達した。

 その翌日のことだった、友人は部長に呼び出されて、印刷したメールを見せられた。それは、係長が部長あてに送ったメールだった。友人が下した決定についての不満と、それが間違いであること。隣の課長が個人的な怨嗟によって不当な評価を係長の部下にしていること、そして友人である人事部副部長もその片棒を担いでいることが長々とつづられていた。