「南シナ海埋め立て問題」で
緊迫する米中関係

 もっともわかりやすいのは、米中関係が急に冷え込んできたことだろう。これは、特に世界情勢を追っていない人でも感じているはずだ。表向きの理由は、「中国が南シナ海で大規模な埋め立てをしていること」である。たとえば、米国のカーター国防相は5月27日、中国の行動を厳しく批判した。(太線筆者、以下同じ)

<米国防長官、中国を非難…「地域の総意乱す」読売新聞 5月28日(木)12時6分配信
【ワシントン=井上陽子】カーター米国防長官は27日、ハワイ州で行われた米太平洋軍の司令官交代式で演説し、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で岩礁埋め立てや施設建設を進める中国の動きについて「中国は、国際規範や、力によらない紛争解決を求める地域の総意を乱している」と強く非難した。

 そして、数ヵ月前には想像もできなかったことだが、「米中軍事衝突」を懸念する声が、あちこちで聞かれるようになった。

<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信
 南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。
 軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>

「中国が、他国と領有権問題を抱える場所での埋め立てをやめないから米国が怒っているのだ」というのは、「表向き」の理由に過ぎない。

 なぜなら、この問題は以前から存在していたからだ。中国が本格的に埋め立てを開始したのは、13年である。そして14年5月、フィリピン政府は、ミャンマーで開かれたアセアン首脳会議の場でこの問題を提起し、中国に抗議した(フィリピンは、中国が埋め立てを進める場所は、「自国領」と主張している)。

 つまり、この問題は、1年前には全世界の知るところとなっていた。ところが、米国はごく最近まで、この問題を事実上「無視」「放置」していた。米国が、急に中国の動きを大々的に非難しはじめたのは、「裏の理由」(=AIIB事件)があるからだろう。