維新や民主党の党内には、いろんな考え方の議員がいることは事実だ。安保法案は「違憲」というほどではなく、さまざまな問題点を修正して通せばいいと考える議員もいる。だが、彼らは「安倍政権を助けなくても、どうせこの法案はいずれ通る」ということを認識すべきだろう。維新や民主党の党内で自説を展開して、党内路線対立を顕在化させるのは、ただの「自滅」なのである。

 今は、自説を抑えておき、「安保法案には反対ではないが、安倍政権での実現は容認できない」という姿勢に徹すればいい。まずは安倍政権を退陣に追い込んだ後に、改めて自説に基づいて修正に着手すればいいではないか。たとえ野党の内部は「同床異夢」であって、とにかく一致団結して、いかに「与党の横暴」を印象付けて、どうやって安倍内閣の支持率を落とすかを考えることが大事だ。

野党の安保法案の国会戦略(2)
経済政策を軽視してはならない

 安保法案の国会を考える際、もう1つ大事なことがある。それは、安保法案への断固反対と同時に、「経済政策」に対する批判を徹底的にやるということだ。なぜなら、安保法案など首相の「やりたい政策」に国民の批判が高まっているにもかかわらず、いまだに安倍政権への支持率が高いのは、経済政策「アベノミクス」に対する支持があるからだ。

 アベノミクスとは、株高・円安に誘導することで、企業が短期的に営業利益を増やして目の前の決算期を乗り切り、一息つけるというものだ。長年の不況に苦しむ企業経営者や、部長、課長、その部下の平社員の「とにかく利益が出るならなんでもいい」という心理によって、高い支持を得てきた(第75回)。

 一方、アベノミクスには、「既に海外移転を完了した日本企業の輸出は増えない」「日銀が銀行に大量の資金を供給しても、企業には資金を借りるニーズがない」「円安で営業利益が増えても、グローバル競争に晒される企業は、容易に従業員の給料を上げられない」「むしろ国内産業、特に中小企業は円安の悪影響をモロに被り、原材料費、燃料費の高騰に苦しむ」など、さまざまな問題点が指摘されてきた。実際、アベノミクスは効果がない、という批判も多い。

 また、国民は第二次安倍政権が発足するまでの、歴代政権が苦心惨憺取り組んできた財政再建や持続可能な経済運営に、一定の理解を示していたと思う(第40回)。だが、いろんな問題点があったとしても、アベノミクスが「失われた20年」の長期経済停滞に苦しむ国民に一息つかせたという事実は侮れないものだ。国民は、長年のデフレとの戦いに疲弊し切っており、なによりもまず、そこから解放されたがっているのだ。それゆえに、経営者も現場も、アベノミクスの本質が「モルヒネ」のようなものだとわかっていながら、簡単には否定しがたい心情があるのである。