国民の多くは、安倍政権の「やりたい政策」の推進にに関しては不安を持っている。しかし、アベノミクスを捨てて、またひたすら耐え忍ぶ日々に戻れるかというと、躊躇する国民も多いのではないだろうか。それが安倍政権への「消極的支持」につながっていることを、野党は軽視してはならない。

 要するに、野党がアベノミクスを批判するのは簡単なことではない。野党が「アベノミクスは失敗だ」という時、どんな経済政策をやるのかというと、結局、過去と同じ苦心惨憺たる財政再建や持続可能な経済運営であり、「構造改革」「成長戦略」に尽力するということになる。ところが、これらは真面目にやればやるほど国民に「痛み」を強いるものとなってしまう。それでは、安倍政権に対する「消極的支持」を打ち破るのは難しい。だが、それでも野党は「格差」の問題を中心に、徹底した批判は続けなければならないだろう。例えば、「労働者派遣法改正案」が衆院で可決し、議論の舞台が参院に移っているが、野党は「生涯派遣につながる」として徹底抗戦を続けていくべきだろう。

安倍政権の支持率が下落すれば
自民党内の政局が動き始める

 要するに、野党は安保法案の国会審議において、「安倍政権の横暴」という印象を国民にべったりと植え付けること、アベノミクスの負の部分を強調することに徹し、安倍政権の内閣支持率を落とすことを狙うべきである。

 安倍政権の内閣支持率が落ちてくると、政局が動き始めるはずだ。自民党内の潜在的な「次期総裁候補」たちは、安倍政権の長期政権化によって、自分たちの出番がなくなる焦りを内心感じている(第64回)。特に、かつて民主党政権とともに「社会保障と税の一体改革」に取り組んだ自民党幹部たちは、アベノミクスで経済財政政策の意思決定から外されて、内心おもしろくない(第51回)。民主党は、彼らと強いパイプを持っている。安倍政権の支持率が落ちれば、彼らと裏で連携する余地が出てくるかもしれない。

 以前論じたように、筆者は9条を除く「人権」や「行政改革」に関する部分の憲法改正を進めるべきだと考えている(第106回)。また、安全保障政策の本質が「武器を使わないために、武器を揃えること」であり、「武器を使うことになったら失敗」だという考えを前提にして、安保法案の成立が日本の抑止力を完璧なまでに高めるというのなら容認してもいいと考えている(第104回)。

 つまり、野党・反対派の主張を無条件で受け入れているわけではない。しかし一方で、安倍政権は安保法案をなにがなんでも通すことだけに必死で、国会の答弁が粗っぽく、国会でまともな安全保障の議論ができる状況にないとも考えている。従って、安倍政権には早く退陣してもらって、次の首相(自民党か野党からかわからないが)の下で、しっかりと議論を始めたほうがいいと思う。その意味で、野党には、愚直に「廃案」を目指すだけではなく、次の選挙を見据えて、安倍政権に悪印象をべったりと植え付けるようなしたたかな国会戦略を実行してもらいたいのである。