ファッションは
誰のためのものか?

 しかしそうは言っても「やっぱり自分の好きな服を着たい」と思う方もいるかもしれません。でも、考えてみてください。そもそもファッションは誰のためのものなのでしょうか? 多くの方が「自分のためのもの」だと思うかもしれません。しかし自分の今着ている服装は、鏡にでも映さないと、ちゃんと自分で見ることはできません。つまりあなたの服装を日常的に見ているのは、自分以外の他人なのです。

 学生時代であれば、自分さえ楽しめればいいのかもしれません。しかし大人のファッションは「人から自分はどのように見られているのか」を意識することが大切です。なぜならファッションは「自分はどのような人間なのか」を示す1つの指標となるからです。

 ちゃんとした大人でも、パッと見の印象で「だらしない」「常識がなさそう」などとマイナスの印象を与えてしまうと、そのイメージを払拭するのはとても大変です。仕事においても、プライベートにおいても、服装で損をしてしまうことがないように最低限の気遣いをすること。そのような小さな心がけが日々の生活を豊かにしてくれるのです。

 また、私がお客さまと話していると、「休日の服くらい自由に着てもいいのでは?」という意見もよく聞きます。しかし自由というのはとても難しいものです。誰にも教わったことのない大人のファッションを自由に着こなそうとしても、買うお店もわからなければ、何を買えばいいのかもわからないものです。だからこそ大人のファッションにおける基本的な知識を学んでおくことが効果的なのです。

 大人のファッションは自分だけのためのものではなく、周囲の人との関係性をスムーズにするために必要不可欠なものなのです。実際私のお客さまにも、服装が変わっただけで自分に自信がつき、苦手だった初対面の相手とも緊張せずに話せるようになったという方がたくさんいます。今まで恋人がいなかった方のコーディネートをした後、その方に恋人ができ、ご結婚されたというご報告をいただく機会も少なくありません。

 このような私の体験から断言します。服には「人生を変える」ほどのインパクトがあるのです。

(続く)