Photo:REUTERS/AFLO

ギリシャ国民の「No」で
著しく上がった交渉のハードル

 ギリシャ問題は、いっそうの隘路に陥ることになった。7月5日に行われた、緊縮策を受け入れるか否かをギリシャ国民に問う国民投票の結果は、大方の予想を覆して「No」となった。

 チプラス首相が強調する通り、これが即、ギリシャのユーロ離脱を意味するわけではない。7月7日にもユーロ圏首脳会合が開かれる予定だが、EU(ユーロ圏各国)などの債権団とギリシャの交渉は、今後継続されるだろう。

 ただこれは、債権団が交渉を“門前払いはしない”ということであって、ギリシャの主張を認めたわけではない。チプラス首相はギリシャ国民の意志を強調するが、逆にドイツなどの国民からすれば、自分たちの税金でなぜギリシャを救済しなければならないのか、という話になる。

「もともとあった利害対立が先鋭化してしまった。交渉成立のハードルは著しく上がった」(丸山義正・SMBC日興証券シニアエコノミスト)

「国民投票前まではギリシャのユーロ離脱は確率20%と考えていたが、今は7割くらいになっている」(中空麻奈・BNPパリバ証券チーフクレジットアナリスト)

 目先のポイントは、欧州中央銀行(ECB)がギリシャの銀行に対して行っている資金供給を、どこまで続けるかだ。要は、ECBがギリシャにどこまで時間的余地を与えるかということだ。これが停止すると、同国の銀行は即座に破綻の危機に直面する。

 政府は枯渇するユーロの代わりに「借用証書」の発行で公務員の賃金や年金の支払いを行い、急場をしのぐ可能性があるが、この借用証書はユーロに対し大幅に割り引かれた、価値の低いものとなるだろう。同国の経済と国民生活は、大混乱を免れ得ない。これは、ギリシャがユーロを離脱して新通貨に移行しても、少なくとも短期的には同じである。

 当面のデッドラインは、ECBが保有する国債35億ユーロの償還日である7月20日だ。「おそらく、ECBはその頃までは資金供給を続けるのではないか」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)との見方はあるが、このままではいずれにせよギリシャの破綻は“時間の問題”である。「ECBやユーロ圏側の、この1、2日の動きが極めて重要」(中空チーフクレジットアナリスト)との指摘もある。彼らにギリシャを助ける意志がなければ、その時点で交渉打ち切りとなるリスクも拭えない。