国民にほとんど知らせず
他国と同盟関係に入るという愚

 米国は尖閣問題で日中の対立に巻き込まれては迷惑だから日中双方に関係改善を勧める一方、米軍は海上自衛隊を南シナ海の哨戒に引き込もうとする。米国の首尾一貫しない姿勢を受けて安倍首相は右往左往する。

 安倍氏は今年2月12日の施政方針演説では中国との戦略的互恵関係の確認と関係改善の成果を語り「今後、安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えて参ります」と言い、事実その方向で努力している。一方、中国漁船への射撃や拿捕など小紛争を起こしているフィリピンに巡視船を無償供与し、今年6月23日には海上自衛隊のP3C哨戒機を派遣してフィリピン海軍と共同訓練を行い、地位協定の協議をして同盟関係に入ろうとしているのは矛盾している。

 自国の防衛なら、一方でにこやかに接しつつ、他方で備えを固めることに一理はあるが、帰属が未確定の島や岩礁を巡る他国の紛争に首を突っ込み、中国との関係を悪化させるのは経済上も安全保障上も不得策だ。

 フィリピンの海、空軍戦力はほぼ無きに等しく、艦艇のほとんどが船齢30年を過ぎて他国で退役したものだ。空軍はイタリア製の初級ジェット練習機(最大速力660km)12機を持つが、可動状態にあるのは4機と言われる。GDPは2900億ドル(約35兆円)で日本の7%程度。軽率な行動もするが気の良い国民だから友好国としては良いが、同盟国にして日本にイタリア以上のメリットがあるとは考えにくい。

 フィリピンでの自衛隊の地位に関する協定はフィリピン上院の承認が必要、とアキノ大統領は言うが、日本外務省は国会の承認なしに「交換公文」の形で締結することを考えている。憲法73条の3では条約を締結するには「事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と定められ、交換公文も条約の一種であることは外務省も認めている。だが政府は1974年に大平正芳外相が示した政府見解で条約、協定、国際取りきめなどのうち①新たな立法措置を必要とするもの②財政支出義務を生じるもの③政治的に重要なもの――だけを国会にかけて承認を求める、としている。

 これ自体、合憲か否か議論の分かれるところだが、フィリピンへの巡視船の供与や今後の「能力構築支援」(軍事援助)は財政支出を伴うし、日本の安全保障、対外政策上、きわめて重要な事案と思われるが、外務省は「防衛装備移転3原則」(2014年7月の閣議決定で武器輸出3原則を緩和)や、ODAによる装備の提供、フィリピンとの地位協定はなどはそれぞれ別個のものであり、地位協定は日本の法律の変更を要しないから国会の承認は不要、と言う。部品を別々に入手し、組立てれば「同盟」という図だ。

 これらは野田政権が着手しただけに、民主党は追及しにくいが、国会で議論されず、国民もほとんど知らされないまま、他国と同盟関係に入るのは一大事だ。他の野党やメディアはこの問題に注目すべきだと考える。