この『チャイナ・シンドローム』の映画が、なぜ、これだけの大事故をピタリと予言できたか?

 それは、実際の原発技術者が、「すべて原発で起こり得ること」、および「歴史的な事実」を組み合わせて、この映画のシナリオを書いたからであった。

 つまりフクシマ原発事故の35年前、1976年の“ニューヨーク・タイムズ”には、「3人のGEのトップエンジニアが原子炉の危険性を訴えて辞職し、反原発運動へ」という大きな記事が出ていた。

この3人が映画『チャイナ・シンドローム』のシナリオを書いた優秀な原発技術者であった。

 そのうちの一人(記事写真の一番右)は、フクシマ原発事故のあと、CNNのインタビューに答えて、

「日本のみなさん、われわれアメリカ人がつくった原発で、このような大事故を起こして申し訳ない」

 と、涙を浮かべていた元GE設計者デイル・ブライデンボー氏であった。
 彼は、原発の欠陥を告発していたのだから、彼が悪いわけではないのに。

 さて、その映画『チャイナ・シンドローム』のラストシーンで、主演のジャック・レモン扮する原発運転員が、原子力発電所のコントロールルームで拳銃を振り回すという場面が出てきたのである。
 この場合は、テロではなく、最も誠実な運転員が、「大事故を食い止めようとして」拳銃を振り回すのだが……行為としてはテロと同じだ。

 その場面では、ジャック・レモンが、警備員が腰にさしている実弾入りの拳銃をサッと奪ってしまうのだ。

 これも、映画のシナリオを書いた3人のGEのトップエンジニアが「原発で起こり得ること」として、内部の事情を知っていたから描いたシナリオである。