失敗を恐れる人のために行程を示す
――準備としてはどんなことをするのでしょうか? とくに第1段階で5週間、第2段階で6週間と、実際にアイデアをまとめる前のステップに非常に時間をかけていると感じます。
アイデア出しにはインキュベーションの期間が必要です。チームのメンバーにそれぞれアイデアノートを持ってもらい、散歩しているときとかお風呂に入ってリラックスしているとき潜在意識から浮かんできたアイデアを書き留めておいてもらいます。そしてワークショップの場でノートを開いて、さらにアイデアを広げていくのです。
FORTHメソッドの強みは非常に保守的な大企業でも使える点です。大企業は巨大タンカーのようなものです。私自身がコンサルティング会社に移る前にオランダの大手食品メーカーでマーケティングを担当していたので、大企業の文化はよくわかっています。日本で行ったセミナーでも、「自分の会社はとても保守的で……」と言う参加者に、「おめでとうございます! 保守的ということは改善の余地がたくさんあるということです」と申し上げました。
大企業でイノベーションを起こそうとする人に常にアドバイスするのは、保守的な企業文化と闘うなということです。闘ったら、負けるだけです。まず受け入れなさい、と。静かに水面下で準備をして待つのです。するとある時、気づく人が現れます。「方向転換しなければ競争に負けてしまう、変わらなければ!」と。イノベーターはそのタイミングをとらえなければなりません。
ただ、イノベーションにはリスクを取る必要がある。イノベーションは起こしたいが、リスクは取りたくない、というジレンマがあります。新しいことを始める際にはリスクをマネジメントすることが重要です。イノベーションのプロセスで不確実なアイデアをより確実なものにするのです。良いビジネスモデルがある、技術は実現可能である、顧客が求めている、などです。
日本はじめ多くの文化は失敗を恐れます。私はまだ日本に数日しか滞在していませんが、すべてを完璧にしようとする傾向があると思いました。それはとても良いことです。でもイノベーションに失敗はつきもの。失敗を恐れるという問題はヨーロッパにも北米にも、南米にもあります。そこで私は失敗を恐れる人のためにFORTHで行程を示しています。この行程にしたがって旅をしてくださいと。タイムテーブルも用意します。これによってスタート前に確実な旅程が見え、恐れを軽減することができます。