ピーター・ソンダーガード ガートナー リサーチ部門 最高責任者

 すべての企業がテクノロジー企業になっている。CEOや重役たちと会社の成長戦略について議論するたびに、そう感じさせられる。組織においても、企業のビジネスにおいても、政府機関においても、みな同じ傾向にある。古いeビジネスから新しいデジタルビジネス、すなわちdビジネスに変わりつつあるのだ。もはやリーダーたちはテクノロジーを単に効率や機能性のために活用しているのではない。製品やサービス、製造や輸送に至るまで、あらゆる面をデジタル化することで組織を作り替えているのだ。

 果たしてデジタル化が当たり前のように浸透しているのか、CEOたちとの対話から深く掘り下げて見ていこう。もし、本当に組織がdビジネスに変わっていくならば、公式声明でも何らかの方法でデジタライゼーション(デジタル化)について謳わねばならないだろう。デジタル化されたプロセスや価値連鎖から、ビジネスチャンスがどのように現れるのか。また、新しいビジネスモデルやデジタル化した製品やサービスはどう成長していくのかーー年次報告書にも、ある程度の詳細な記述が明記されているべきである。

 そこで、我々は世界のトップ500企業からランダムに25社を抽出し、2013年の年次報告書を読んでdビジネスに関する記載があるかどうか探してみた。すると、驚きでもあり、予想どおりでもあったが、dビジネス関連の記述はほぼ皆無だったのだ。結果は以下のとおりだ。

・25社のうち15社はテクノロジー、IT、デジタル化について言及していなかった。リスク項目にITシステムに関する基本的な記載は見られたが、これは毎年の年次報告書に明記されている内容だ。一方、テクノロジー、デジタル化、モノのインターネットやビッグデータについて触れていた企業は10社だった。いずれも金融サービス業界か、コミュニケーションサービスプロバイダー、もしくは業界での異端児的な企業だった。

・デジタル化について述べていた箇所は、会長またはCEOのメッセージの中だった。しかし、それらはいずれも最後の締めの言葉で、他の箇所に比べてさほど重要視されていなかった。