構造改革を経て多くの日本企業が過去最高益を記録している。とはいえ、未来に目を向ければ「持続的成長の実現」は依然として大きな課題だ。そして、持続的成長を可能にする鍵は、時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか、すなわち組織の「自己変革力」である。
多数の企業変革に関わってきたデロイト トーマツ コンサルティング パートナーの松江英夫が、経営の最前線で果敢に挑み続ける経営トップとの対談を通じ、持続的成長に向けて日本企業に求められる経営アジェンダと変革の秘訣を解き明かす。
今回は、GEグローバル本社役員で日本GEを率いる熊谷社長にご登場いただいた。その言葉からは、グローバル企業の日本法人だからこそ見えてくる「日本の強み」や、その強みを生かした成功事例からドメステイック企業が抱える問題のブレイクスルーのヒントが見えてくる。

【経営の時間軸】
10年先を見越して、今やるべきことを意識する

松江 GEの歴史は130 年に近く、日本GEも100年を超えますが、熊谷さんは、5年、10年、もしくは100年とか、常にどのぐらい先を意識されながら経営されてらっしゃるのでしょうか。

熊谷昭彦(くまがい・あきひこ)
日本GE株式会社代表取締役社長兼CEO。カリフォルニア大学ロサンゼルス校経済学部卒。三井物産を経て、1984年GEに入社。2006年2月、GEコンシューマー・ファイナンス株式会社の代表取締役社長兼CEOならびにGEのコーポレート・オフィサー(本社役員)に就任。2011年6月にはGEヘルスケア・ジャパン株式会社 代表取締役会長を経て、2013年12月から現職。

熊谷 短期的に達成しなくてはいけないもの、中期のものといろいろありますが、長期となると、だいたい10年ぐらいです。でも今は何が起こるかわからない時代ですから、10年スパンで考えるといっても、その内容が毎年少しずつ変わることは十分あり得ます。

松江 その10年は、漠然となのでしょうか、それともよりクリアに数字的なイメージも持てるぐらいで見えるものなのでしょうか。そのあたりの具体性について教えてください。

熊谷 10年単位となると漠然としていますが、中には具体性のあるものもあります。例えば2020年の東京オリンピックです。オリンピックは、2020年をきっかけとして、その先のレガシーづくりと考えると、今からでも、5年プラスアルファの10年ぐらいのスパンで、エネルギーに関係する具体的な戦略がいろいろと出てきています。しかし、日本におけるGEの将来のプレゼンスとか、日本の社員のことについては、「10年後ぐらいにはこうなってたらいいな」と、もう少し抽象的に考えています。

松江 経営者として10年後を常に見ている感じですね。

熊谷 できるだけそうしたいと思っています。必ずしも自分が最後までいなくても、自分は、その10年先を見越して、今からやっておくことを意識しています。環境が変わることで戦略は変えなくてはいけませんから、戦略的な部分が毎年変わることはありますが、基本概念、軸はブレないように留意しています。

 私の立場では、GEの中でいかに日本の強みを生かしてジャパンチームのプレゼンスを上げるかが最大の目的、仕事です。ですから、日本というマーケットでいかにGEが勝っていくかということともう一つ、グローバルのGEの中で、日本チームがいかに目立って、勝っていくか、ということを考えています。そのためには日本のGEの社員がどういう場に出ても堂々と自分たちの強みを主張でき、みんなが共通のものをしっかりと常に持っているようにしたいと思っています。