同じ石で二度転ぶな

 成果を出そうとしても上手くいかないことはあります。私も、必ずしも上手くいくことばかりではありませんでした。ミスをしても怒られることはなかったのですが、そこで重視されたのは同じ失敗を繰り返さないということでした。なんだか当たり前の話のようですが、ご自身のことを振り返ってみて「同じ失敗を繰り返していない」と言い切れますでしょうか?

 トヨタでは昔から「同じ石で二度転ぶんじゃない」という言い方で伝わっていましたが、同じ失敗を繰り返すことを物凄く「ムダ」です。せっかく失敗をしたのであれば、そのタイミングで「次にその失敗をしないために何をすべきか」を考えるべきです。でなければ、その失敗は無駄に終わってしまうのです。

「失敗は成功の母」なんて言葉もありますが、たくさん失敗すれば成功者になれるというわけではないと思います。一度転んだとしても「同じ石で二度と転ばない」と考える人こそが成功に近づいていけるのではないでしょうか。

課題のない報告はいっさい受け付けない

「成果」という意味で、もう一つエピソードを書かせていただきます。それは会社の研修に参加した時のことでした。技術の研修を受講した翌日、会社に戻って報告書にまとめ、上司に提出しました。報告書を渡した時、上司が一瞥してから「こんなものは受け付けない」と言ってきました。私は驚いて「なぜですか!」と反論をしました。今でいうパワハラなのかとも思いましたが、上司の説明を聞くとそうではなかったのです。

 私の報告書には、その研修で何があったのか、それに対して何を感じたのか、ということしか書いていませんでした。それではただの「感想文」だというのです。「小学生の夏休みの宿題じゃないんだからさ」と言われたのを今でも覚えています。

 そうではなくて、「課題を入れろ」というのです。研修を受けて、自分の課題はなんだと思ったのか。その課題に対してどんな取り組みをしていこうと思ったのか。そういったことを考えなければ、自分が成長していかないし、研修を受けた時間がもったいない、というのです。

 みなさんの会社では、研修を受けることが形骸化してはいないでしょうか。研修を受けることがゴールになってはいないでしょうか。我々はビジネスマンとしてお客様からお金をいただいているわけですから、課題を常に探し続けながら、その課題をクリアして成長していかなければいけないと思います。

 以上、ここではあまりご紹介できませんでしたが、新刊『トヨタの自分で考える力』では口グセから自分で考えるためのプロセスも公開しています。思考から行動までのプロセスをストーリー形式で読みやすく書いておりますので、ぜひお手に取ってみてください。

※原稿に誤解を招く表現があったため、正確な表現へと一部修正いたしました。申し訳ございません。(2015.8.7)